【No.037】『ビースティ・ボーイズ/撮られっぱなし天国』他

イリー・K

2007年01月13日 12:00



『ビースティ・ボーイズ/撮られっぱなし天国』
● 12月3日鑑賞
’06/アメリカ/カラー(一部モノクロ)/89分
監督・製作:ナサニエル・ボーンブロウワー
出演:ビースティボーイズ、ミックス・マスター・マイク

『悪魔とダニエル・ジョンストン』
● 12月10日鑑賞
’05/アメリカ/モノクロ+カラー/110分
監督:ジェフ・フォイヤージーグ
出演:ダニエル・ジョンストン、キャシー・マッカーティ、ジャド・フェア


 あけましておめでとうございます。1月6日にこういう挨拶をするのもなんですが、今年もよろしくおねがいします。
 今回は新年一発目ということで「新春2本立てスペシャル」をお送りしようかと思う。スペシャルといってもボリュームはいつもと変わりません。

 今日紹介するのは『ビースティ・ボーイズ/撮られっぱなし天国』と『悪魔とダニエル・ジョンストン』。この2作品にはいくつかの共通点がある。ひとつは「音楽」を扱っていること。そして「ドキュメンタリー」であること。それから「タイトルに主役の名が入っている」こと。あとは「映画」かな。いろいろ共通点を探ろうとしていると見せかけて、ただ原稿の文字数を稼ごうとしているのがバレバレなので感想へ行ってみよう。

 共通点のアタマに挙げた「音楽」という点であるが、私はこれについて語る資格が全くない門外漢である。とにかく聴かない。もちろん好きな歌手もグループもいない。邦楽でこの程度だから洋楽ならなおさらだ。そこへきてこの『ビースティ・ボーイズ』を観たんだから私は何と不届き者なのだろう。

 題名から?ビースティ・ボーイズ?の冠を取ったら、多分いかがわしい映画にとられかねないこの作品はニューヨーク、マジソン・スクエア・ガーデンでのライブの模様を映したコンサートフィルムである。但しこれが他の同じ類いの映画と異なるのは、会場に詰めかけた観客から50人を選び出して1台ずつビデオカメラを手渡し、ライブを撮影させるのである。だから?撮られっぱなし天国?。超安易。

 コンサートフィルムと呼ばれるものには当然、「歌う」演者と「聴く」観客という構図が浮き彫りになるが、ここではそれに「撮る」観客と「撮られる」演者という奇抜な設定を盛り込むことで「プラスα」を発生させているかもしれない。そんなちょっとした予想と期待を胸に観たのだが、映画では「プラスα」は発生していなかった。ただ90分間、ライブの模様を50人が撮った映像で繋ぎ合わせているだけ。しかもビデオカメラだから画質が粗くて後半、目がチカチカしちゃった。これならカメラをわざわざ観客に手渡さなくても会場の至る所に設置して撮ったって変わりはしないだろう(しかし2人だけ、トイレに駆け込む人と楽屋裏に忍び込もうとする人がいた)。とにかくこんなものを映画にしちゃいけない。ファンクラブかどっかにDVDとして配れば充分の代物である。とかなんとか考えながらチラシ裏を眺めてたら、「2006年サンダンス映画祭正式出品作品」の文字が。映画として認められてるのかコレ。世の中は大甘が多いってことか。

 それに比べてもう一方の『悪魔とダニエル・ジョンストン』はドキュメンタリーとしての見ごたえは格段に上である。ダニエル・ジョンストンとはデヴィッド・ボウイをはじめとする有名アーティストからその音楽性を愛され、精神病を患いながらも創作活動を続けているシンガー・ソングライター。そんな彼の破天荒な半生がこの作品で映し出されている。ジャンクフードと着色料たっぷりの清涼飲料水で出来上がった肥えた体型と中年に差しかかった立派なオッサンでありながら、きめ細かい子供の落書きのような絵を作品にし、お世辞にも上手いとはいえない歌声だが、心打たれる歌詞とメロディで曲を作るいつまでも忘れない純粋無垢な姿に己の歳をとるごとに身に付いてしまった醜さを思い知らされる自分がいた。「俺って汚れた人間なのか。」とお思いの方にはこの映画はそれを試すリトマス試験紙のような役割を果たすかもしれない。


ビースティ・ボーイズ/撮られっぱなし天国


悪魔とダニエル・ジョンストン


ボン評価は…
☆ おもしろい ○まあまあ △つまらない ×クズ
の4段階評価です。

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