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2015年11月09日

【No.177】沖縄やくざ戦争

【No.177】沖縄やくざ戦争



’76/日本/カラー /96分
監督:中島貞夫
出演:松方弘樹  千葉真一  渡瀬恒彦 尾藤イサオ 室田日出男 成田三樹夫 地井武男  梅宮辰夫

 誰が喜ぶんだという『あぶない刑事』最終作の制作発表をぶっ放した東映はやっぱり唯我独尊で己の道を歩んでいるように見える。独自に築き上げた結果、体制を保っているコンテンツの盤石さは他社とは異質だ。ほとんどアニメと特撮ヒーローもの、たま〜に『相棒』で占められているから。過去の作品の保護(著作権的な意味ではない)には無関心らしく、劣化がすすむ残すべき名作のフィルム修復はほとんどしていないと春日太一が言っていた(今年の沖縄国際映画祭プログラムのひとつ『鬼龍院花子の生涯』上映コメンタリーにて)。

 60〜70年代の東映を支えたコンテンツといえばやはりやくざ映画であった。一連のやくざ映画は60年代は「任侠路線」、70年代に入ると「実録路線」と流れが変わっていくが今日ご紹介する『沖縄やくざ戦争』は「実録〜」から生まれた作品である。起源とされる『仁義なき戦い』の成功から日本各地にある実在する組織の抗争をモデルに作られるスタイルが定着し、この『沖縄やくざ戦争』も実際にあった抗争事件が元になっているらしい。しかし完成後は県内の“関係者”への刺激を恐れて上映されなかったんだとか。

 数打ちゃ当たるとばかりに量産された作品群のなかでも本作は亜流の感は否めず、イントネーションの難しさからかセリフにも地元の方言や訛りは排している(使用されるのはバカを意味する“フラー”と叩き殺すを意味する“たっくるす”ぐらい)。松方弘樹や梅宮辰夫、室田日出男に成田三樹夫とおなじみの面々。日々の抗争に翻弄される下っ端やくざ、それを狡猾に操ろうとするも腰抜けな上層部とファンには安心のお約束設定だが消化不良気味ではある。

 しかし何のかんの言っても本作には鑑賞するに足る大きな存在がある。千葉真一だ。ほかの実録ものと大差ないだろうと本当は興味が無かったのだが、特集を組んでいたust配信番組「木曜キネマ探偵団」内での千葉ちゃん押しが、私の鑑賞欲を一気に駆り立てた。関根勤の物まねが何のデフォルメも無かったことに爆笑した『新幹線大爆破』並みのエキサイトを期待した。いやぁ〜スゴいのなんの、本作は千葉ちゃんに尽きると言っても過言ではない。写ってるシーンすべてがハイライト。脇役のはずなのに千葉ちゃんしか頭に残らないのだ。

 千葉ちゃん演じる国頭が映画をかきまわす。復帰直前の沖縄で進出を目論む本土系やくざに対抗するべくコザと那覇の組織で結成された「琉盛会」、コザ組織を取り仕切る国頭は最も過激な人物で、沖縄戦によって本土の捨て石にされた戦争経験から本土の人間を毛嫌いしている。本土系の居酒屋ができれば殴り込みをかけ、大阪から単なる観光でやってきたヤクザにも襲撃をかける。戦争になると恐れおののく琉盛会の幹部らをよそに好戦的な国頭の一言がたまらない。「戦争だ〜い好き」。

 最後は渡瀬恒彦の凶弾に倒れてしまうが、その死に様たるや筆舌に尽くしがたい。そのシーンだけ3回繰り返して見た。偶然同じ年に作られた『青春の殺人者』の市原悦子以来の衝撃である、いや笑撃と言った方が妥当か。同じ衝撃でもこれほど方向性が違うとは。時代劇の斬られ役も含めて、殺られ役には伝統が息づいていて、これを請け負う大部屋俳優にとっては一大舞台であるとどこかで聞いた覚えがある。大抵は下っ端のチンピラで、何度撃ってもゴキブリのようにのたうち回って絶命というパターンは私の数少ない鑑賞歴から割り出したデータではいちばん多い。幹部であるはずの千葉ちゃんもこのチンピラパターンに挑んでいるが、やはり当時東映をしょって立つ看板俳優の一人としての面目もあってか凄まじい死にっぷり。『戦国自衛隊』とか他の映画でもいっぱい死んでると思うけど、なんと言ってるのかわからない奇声といい、そのまま倒れるかと思いきやしゃちほこみたいな倒立をするフェイントといい「オレの死に様を見てみぃっ!!」ってな気概が笑撃とともに襲ってくるのだ。何度でも繰り返して見たいシーンである。

 蛇足になるが最後に気になったところをひとつ。本作にはやたらとコーラが出てくる。架空のメーカーではなくコカコーラでタイアップかと思えるほどに。主人公の家の冷蔵庫には常備されており、一仕事終えての帰宅や来客があったときなど頻繁に現れる。幹部会の席上にも並んでいた。商品だけには飽き足らず街頭には看板まで。まだアメリカ施政下の沖縄というのを表したかったのかはわからないがソウルドリンクにしてしまうのはどうもなぁ。今でこそさんぴん茶に取って代わっているけど、コーラを愛飲する県民ってちょっとヤだな。

【No.177】沖縄やくざ戦争
評価は…
☆ おもしろい ○まあまあ △つまらない ×クズ
の4段階評価です。




Posted by イリー・K at 00:48│Comments(0)【お】
 
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