【No.079】劔岳 点の記
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’09/日本/カラー/139分
監督・撮影:木村大作
出演:浅野忠信、香川照之、松田龍平、仲村トオル、宮﨑あおい
ポスターに堂々と記されてある「誰かが行かねば、道はできない。」の一文。
私はアントニオ猪木の引退試合を思い出した。そう、あの日朗々とうたい上げたあの詩である。オリジナルだったか先人の詩の引用だったか忘れたが、あの日の勝敗の行方や対戦相手などは憶えていない門外漢も、あの詩だけは記憶に刻み込まれている人は多かろう。至極当然のことだが、どんな分野でも誰かが足を踏み入れない限りその分野は開かれないのである。ん、なんでしょっぱなからアントンの話から入っているのか。気合い入れ始めた矢先から脱線してしまいました。申し訳ありません。
記念すべき第一回目に取り上げたのはこの『劔岳 点の記』。
キャリア40年以上という泣く子も黙る映画キャメラマン(”カメラマン”ではなく映画の場合は”キャメラマン”と呼ぶのです)木村大作が満を持して監督デビューを飾った第一作目。公開前後でテレビのPRで知られるように、実際に山にこもりCGは一切使わない撮影を敢行。完成後、監督自身がフィルムを持って車でPRのため全国行脚するなど、デビュー作だけに並々ならぬ気合いの入れようである。実際山の撮影は危険を極めたようで、確か落石でケガ人が出たというニュースがあった記憶がある。そのとき公開が危ぶまれるのではと心配したものだが、なんとか撮影終了、そして完成し公開までこぎつけたのはなによりである。
こうして公開された本作を先週末、仕事終わりに観に行った。
いやぁ、木村監督が”本物”にこだわった自信を持っているのが分かる。その”本物”に圧巻の一言だ。どうやったら見つかるんだこんなトコというような大パノラマの連続である。日本海側から富士山が見えるなんざぁ初めて知った。あんだけ危険を伴いながらもこれらの絶景を撮りあげたんだから、観る我々は正座して見なければいけなかったかもしれん。私は思いっきり足組みながら観てたが。
しかし、この映画残念なのはあまりに絵としての力が強すぎるだけにストーリーがかすんでしまっている。そのストーリーというのも、あの山々を舞台に何をするのかといえば、測量しに行く。ただそれだけの話である。しょっぱなで述べた「誰かが行かねば、道はできない。」から誰も踏み入れたことがない地へ行って何をするのかといったら測量とは、映画にするにはちょっと地味ではないか。それを2時間19分かけてやっちゃうんだから。でもそれだけやってのけるのはある意味ダイナミックでもあるかも。しかし、40年以上培ってきた腕でそれなりにこしらえてあるから、損することは決してない。というよりも絶景だけで身銭を切る価値はあると思う。
最後に絶景の数々の他にチェックしてほしいところを二つほど。
一つ目は宮﨑あおい。といっても私は彼女にはな〜んも興味はない。映画出まくりでも見てなかったし、「篤姫」なんかさもありなん。本作でも「ああ、また出てきた」てな感慨で見ていたが、ある所に目が行った。彼女、とてつもない冨士額である。時代背景がそんなに変わらない「篤姫」をご覧になっていた方には、もはやおなじみかとは思うが、あれほどまでの額は見たことがない。私は富士額がなんたるかはよく知らないが、ありゃ立派なモンだ。「ザ・冨士額」と名付けたいくらいだ。
そして二つ目はモロ師岡。たまに端役でチラチラ見てきたが、あんなに顔デカイとは思わなかった。石橋連司と並んでいるとそれが尚際立っている。
そんなわけで数々の絶景と合わせてこの二つは要チェックだ!
ボン評価は…
☆ おもしろい ○まあまあ △つまらない ×クズ
の4段階評価です。
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