2013年05月04日
【No.128】年上の女 博多美人の恥じらい 他1本

「年上の女 博多美人の恥じらい」
’02/日本/カラー /60分
監督:荒木太郎
脚本:吉行由実
出演:富士川真林 汐音 新郷美奈 高木耕太 松浦浩司
「癒しの遊女 濡れ舌の蜜」
’10/日本/カラー /60分
監督・脚本:荒木太郎
出演:早乙女ルイ 里見瑤子 佐々木基子 那波隆史 荒木太郎
前回、初めて「薔薇族映画」を筆下ろししたら余計に迷宮の園に迷い込んでしまったピンク映画探求の旅からはや一年。今回は3回目となるピンク映画報告をお送りしたい。
向かったのは例によって今回も首里劇場。3本立ての興行を上映時間の読み間違えというミスで(というより新聞に上映時間は書かれてないんで読むのが難しいんだが)1本見逃してしまい2本の鑑賞となった。
今までピンク映画にどう向き合ったら良いかわからないでいたが、観ていくうちに楽しむ極意を見つけたような気がする。それは最も専門とする濡れ場のことではない。お腹の肉が少々余った中年の男と二の腕をぷるぷるさせた女が抱き合うようなものに興味は無い。前回、ピンク映画が受け付けられない理由ととして貧乏臭いことを挙げたのだが、私が見出した楽しみはここにあった。慣れと言う事も相まってか、観ていくうちにこれが楽しみになってきたのである。「貧乏臭い」ではなく「素朴」と言い換えたらいいだろうか。血が通ってるというか、手作り感が濃厚なだけに温もりを感じさせる。それとは対極にある豪華なハリウッド大作なんかド派手なCGてんこ盛りや巨大セットを作って大量のエキストラを投入し美男美女の俳優陣が飾るスクリーンにはただただ関心の感しきりだが、ミニマムなピンク映画にだってあると思うのだ。作品によって異なる局部の隠し方だとか、どこからかき集めたのかわからない普段服モロバレなエキストラとかテレビや一般映画ではあまり見られないどこかくすんだ俳優陣など他には無い味わいがここにある。観客を物語の世界に埋没せんと頑張っている作り手たちからすれば迷惑な楽しみ方だが。しかし今回観たこの2本を通じてピンク映画の限界というのを思い知らされた回となった。
「だったら観るなよ」と言わずに聞いて欲しいがまずピンク映画における濡れ場は生命線であると同時に縛りになってしまうのがどうしても付きまとってしまう。濡れ場目的の方には万々歳だが、濡れ場シーンに入るということは一旦物語がストップしてしまうことである。濡れ場より物語重視派の私にはそれが時々じれったく感じてしまう。今回は特に顕著でやたら長く感じたものだった。それが売りなんだけどね。やっぱり私は迷惑な客だな。ほかにも2本それぞれに限界がそこかしこに見られた。
1本目の『年上の女 博多美人の恥じらい』は初めて観たピンク映画の女優に憧れを抱く男子高生のひと夏を描いた作品。高校三年生が迎える夏休みは学生生活の最後という特別性が、より一層遠いあの日の懐かしさを掻き立てられ、そこに淡い恋心なんぞ絡められたらたまったものではない青春映画に取り上げられる鉄板といってもいいテーマ。本作もちょっとイイ話に着地しかけたところだったが、納得いかないところがあって残念な印象に終わった。監督にとってセックスとは何なのかと問うてみたい。それは置いておくとしてスタッフ・演者ともに人手が足りないであろうことは承知の上でもキャスティングに難アリだ。男子高生が受験勉強の合間に同級生の女の子と絡むシーンがあるが、この女の子の背面のお尻よりちょっと上にエンジェルか何かの両翼のタトゥーがあるのである。こんな女子高生はいないだろう。いや、最近の子はやたら早熟でけしからん女の子もいるかもしれない。ただ平均的な女子高生のイメージにはまだ辛うじて無いと思う。年の割に肌つやが落ちているのは目をつむろう。しかしタトゥーはアウトだ。女子高生に見合うような演者が本当にいなかったんだぁ。
2本目の『癒しの遊女 濡れ舌の蜜』は永井荷風の「墨東綺譚」が原作だが、比べちゃいけないとはわかりつつも、そこはどうしたって新藤兼人監督の『墨東綺譚』(一般映画だけどR指定だった)を思い出してしまう。戦前の玉ノ井の私娼窟を舞台に小説家と娼婦・お雪の恋をほぼ原作通りにしているが、こっちは制作環境上やはり時代設定を合わせられる“体力”がないからか現代に置き換え、舞台も上野界隈に変更されている。小説家のカンカン帽に下駄履きという出で立ちは時代設定に合わせられないせめてもの名残なのだろう。しかし現代の風景にぽつんと一人置くとちょっと異様である。原作のトレースという意味ではどう考えても新藤版に劣ってしまうところで唯一対抗しうるのは濡れ場シーンしかないだろう。専門分野なのだから性描写においては自由度は高い。その上ヒロインはピンク映画にしてはルックスが抜群な早乙女ルイを起用している。しかし、最後の砦となる濡れ場までも屈服されてしまう。何せ新藤版は津川雅彦がやってるんだから。かつては邦画で屈指の濡れ場の手練と名を馳せた津川である。これにも敵うはずが無い。前回取り上げた『浮雲』もしかりで監督の荒木太郎は過去に映画化された文芸作品をピンク映画に持ち込む事に腐心しているようであるがこれからも続けて欲しい。このような負け戦(?)にめげずに限界突破をしてほしいところだ。
年上の女 博多美人の恥じらい

癒しの遊女 濡れ舌の蜜

評価は…
☆ おもしろい ○まあまあ △つまらない ×クズ
の4段階評価です。
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Posted by イリー・K at 19:39│Comments(0)
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