てぃーだブログ › 激烈シネマニアン! › 【そ】 › 【No.116】浮雲 空に咲く愛の地図

2012年05月27日

【No.116】浮雲 空に咲く愛の地図

【No.116】浮雲 空に咲く愛の地図



’11/日本/カラー /60分
脚本・監督:荒木太郎
原作:「浮雲」林芙美子
出演:那波隆史 玄波孝章 名越孝太郎 小林節彦 今泉浩一


 “映画”である以上、どんなジャンルのものでも分け隔てなく平等に扱うことをモットーとしている当ブログ(そんなもんあったのか)。ピンク映画とて同じ。エッチなシーンを除けば一般の映画と何ら変わりはない。ドンパチや格闘シーンがあるのはアクション映画。殺人シーンがあるのはホラーやサスペンス映画と同じ理屈である。非常に極端ではあるが。

 以前初めてピンク映画を紹介したあとも、チャンス(時間とお金)があれば通って観た。もちろんコザ琉映にも。しかし、これといった作品には、いまだに巡り会えず、せいぜい女優に“当たり”を見つけたくらい。年齢的に私よりちょっと上。熟れた女性に目覚め始めた自分に気付いたのが唯一の収穫か。そんなのらりくらりな私だが、今日もめくるめくピンク映画の世界を探求すべく、沖縄最後の「秘境」、首里劇場へ向かった。


 『浮雲 空に咲く愛の地図』は、私にとってピンク映画のコアな領域に踏み込んだ記念すべき映画である。というのは、本作は薔薇族映画。言うなればゲイ映画である。男同士が互いに求め合い、愛をむさぼるゲイ映画は一般映画では意外と多い。今思いついたものでも『ブロークバック・マウンテン』や『ブエノスアイレス』などがある。しかし、どういうわけか暗い話が多い。ピンク映画の本作も例に漏れず、何とも暗くどうしようもない悲恋に終わっている。

 この日は他の2本と加えて3本立てで観たのだが、“カラミ”のシーンにはすっかり慣れたようなものの、作品全体としてあまり受け付けられないのが多い理由がひとつわかった。一年に数本コンスタントにせっせと作り続けている製作者にこう言っちゃうと非常に気が引けるのだが貧乏臭いのである。ピンク映画に比べりゃあ制作費は潤沢であろう一般映画に浸りきって舌が肥えてしまった私には、冒頭のタイトルバックの入りからして独特の安さを感じてしまう。自主映画かと見紛えてしまうほどだ。しかも今回観た3本すべて荒木太郎という監督の特集上映で、作品の特徴らしいタイトルから巻末のスタッフロールまですべて手書きというのが、より自主映画度を上昇させている。路上シーンはすべてゲリラ撮影なのかなとか、屋内のシーンでは誰のツテを使ってココを借りたんだろうとか、制作費のなかでいちばんかかるのは主演女優(AV出身の)のギャラなのかなとか、そういった下衆な考えが頭のなかを駆け巡るのである。まえに観た主役がキャビンアテンダントという設定の映画では、飛行機内のシーンが明らかに“機内”ではなかったのにはちょっと泣きそうになった。

 そんなことも含めて『浮雲〜』の感想としては取り立てて言うことは無い。鑑賞中私のなかを支配していたのは前出の下衆な考えとかではなく睡魔であった。ウトウトしてるのに気がつく度にカップルの片方が左遷されてたり、またある時はもう片方が宗教団体に入っていたりして、すっかり筋が追えなくなっていた。あと、ピンク映画だけあって一般映画よりも“カラミ”がダイレクトに映されるので免疫が無い故に筋を追うこと忘れてしまうくらいブっ飛んでしまったというのがある。記念すべき薔薇族映画バージン喪失なのにめんぼくない結果となってしまった。よって今回の評価は2回目の「わからない」発動事例とさせていただきたい。

 めんぼくないまま締めるのは申し訳ないんで、お詫びの印として、ピンク映画館に訪れない限り決して知ることはできないちょっとした情報を紹介したい。今回鑑賞した3本を送り出した「多呂プロ」というところは映画とポスターを作るだけで宣伝媒体がほとんどないピンク映画界において独自にパンフレットを作っている。これが超が付くほどアナログなもので一般映画館で販売されているようなものとは違い、コピー用紙に2色刷りにされたものを二つ折りにし、5枚に束ねてホッチキスで綴ってある。これでお値段は100円。全10ページにわたり、一部の写植部分を除いてすべて手書きであるその中身は、始めの3ページは作品製作の模様がマンガで描かれている。次に各出演者の直筆のメッセージが寄せ書きのように載せられ、最後は映画製作に参加したい出演者やスタッフ、またシナリオやその他の募集告知欄が並んでいる(ココだけ写植)。世に出回っているパンフレットの概念を覆す作りに圧倒され、肝心のストーリー説明が無いことなど気にならない。

 巻末にある募集告知欄で注目すべきは「女優発掘プロジェクト」なるものである。「AVではない『芝居演技をする映画女優』を募集」しているそうで今回が2回目なのだそうで、そのなかに気になる手書きの一文が。

「まだまだ続けます(夢の実現)まで!!」

 “夢の実現”とは何なのか。私が死ぬまで果たしてそれは叶うのか。是非とも見守っていきたい。ほかにも『飯場で感じる女の性』テープとか『フェリーの女』テープ(映画の常連俳優が歌っているらしい)とかよくわからないグッズが売られていたり(郵送で送ってもらえる)、パンフレットの著者名が「ドイタ・ペコリーノ」といった謎の記述があったりする。ますますわからないピンク映画の世界。探求の旅はまだまだ続きそうである。




【No.116】浮雲 空に咲く愛の地図
評価は…
☆ おもしろい ○まあまあ △つまらない ×クズ
の4段階評価です。




Posted by イリー・K at 22:32│Comments(0)【そ】
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。