【No.054】プレスリーVSミイラ男

イリー・K

2007年07月07日 12:00



●3月31日鑑賞
‘02/アメリカ/92分
監督:ドン・コスカレリ 
出演:ブルース・キャンベル、オシー・デイビス、エラ・ジョイス




 先日、『監督・ばんざい!』を観ようと受付で入場券を買った際にスタッフの方からここ最近取り上げる作品についてこう聞かれた。
 「もう邦画だけになったんですか?」
 今年に入ってからの邦画含有率の高さは単なる偶然というのもあるが、興行収入が久しぶりに洋画を抜いたというのも相まって話題作が集中していたせいもある。しかしこれから映画業界が一年で最も稼ぎ時といわれる夏休みシーズンに突入する。

 洋画もここは負けじと『ダイハード4.0』『トランスフォーマー』などの大作が公開待機中の今、久しぶりにアメリカ映画をご紹介したい。

 今日紹介する一本は『プレスリーVSミイラ男』だ。何すかソレ?コテコテのB級じゃないっすか。しかし舐めちゃいけない。巷じゃスパイダーマンやらカリブの海賊やらがもてはやされてるらしいが、こっちは贅沢にもプレスリー(ニセ)とミイラ男(もちろんニセ)が出てくるんだぞと強気に出たところで何の気休めにもなりゃしない。日本では今年公開だが、アメリカでは5年前に製作・公開されヒットし、反響を呼んだというチラシの文句を読んでいると、片やスパイダーマン、片やプレスリーとミイラ。規模は違うものの同一線上として楽しめるアメリカ人のエンターテイメントに対する幅の広さには感服する。

 しかしまぁよくこんなモノを夜の部でこっそり上映する桜坂劇場は何とも心憎い。今後ずっとこれを続けてくれるなら、地を這ってでも観に行きますよ私は。

 30年近く前に亡くなったはずのエルビス・プレスリー。実はそれは影武者で当の本人は老人ホームで余生を送っているという大胆不敵な発想が出発点となって映画の話は進む。そして案の定ミイラ男が現れ、一大バトルが繰り広げられるが、至るところで「ナゼ?」「ナニ?」「ナンデ?」とあらゆる疑問が飛び出す。それがどんなもんなのかはここで言い出したらキリが無いのでやめておくが、作品全体を貫く安さとか、随所に目立つアラとか、全然怖くない怪物とかB級映画ならではの醍醐味がたっぷり味わえる。ゴキブリともカブトムシともつかない凶暴な虫がプレスリーに襲いかかるがCG全盛のこのご時世に模型で手動なのがのどかで可愛らしいし、肝心のプレスリーが似てないのもご愛嬌。デタラメかつ真摯に作り上げたこの作品。ほんと見上げたもんだ。

 しかし私が注目していたのはそんな作品云々のところではなかった。久々に見た似てないプレスリーのブルース・キャンベル。それ誰?と思われた大多数の方々はこの先置いて行かれるのでご容赦願いたいが、(ていうか本作取り上げた時点で随分置いてってるが)あのスプラッターホラーの金字塔『死霊のはらわた』シリーズの主演俳優。彼は全作を通じて次から次へと現れる死霊たちからひどい目に遭わされながらも何とか倒してヒーローにのし上がっていくのだが、その苦しめられ方があまりにもオーバーでホラーの枠を越えて笑いの域に達してしまっているのだ。己の体に乗り移った悪霊と闘いながら泥水の中でのたうち回ったり、血の噴水を浴びたりしてもやってることはみなリアクション芸。あの雄姿を『プレスリー|』でももう一度と喜び勇んで劇場に足を踏み入れたが、バトルの方が淡白でちょっとガッカリした。

 ついでにこのシリーズの監督サム・ライミは『スパイダーマン』シリーズの監督でもある。ブルースの盟友であるライミ監督はここでも全作彼をそれぞれ違う端役で起用している。ちなみに現在公開中の『3』では、主役のピーターが彼女へのプロポーズ場所に選んだレストランのウェイターを演じている。今度この映画観た時に彼を見つけたら、ニセプレスリーを演じたのはコイツかと思って欲しい。そうすればブルースは喜んでくれるはずだ。



ボン評価は…
☆ おもしろい ○まあまあ △つまらない ×クズ
の4段階評価です。

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