【No.064】大日本人
’07/日本/カラー/113分
監督:松本人志
出演:松本人志、竹内力、UA、神木隆之介、海原はるか、板尾創路、街田しおん
今年始めの制作記者会見から公開まで、一切その全容は公に漏れることなく制作側の戦略(かどうかはわからん)に煽られて期待値だけが高まっていったこの『大日本人』。まるでハリウッド映画のキューブリックやスピルバーグの映画のよう。内部でもハリウッド様式みたく内容漏洩防止の誓約書なんか書かされたのだろうか。そんな憶測を巡らしながら、初日を迎えた。
『監督・ばんざい!』初回を観たあと、すぐさま車を飛ばしてシネマQへ。場内はほぼ満席。カップル率高し。
4本の予告上映が終わっていよいよ本編へ。松竹のロゴマークが映ったあと役になりきった松本がバスに乗っている画が写される。
さて気になる内容だが、ここから先、未見の方は最後の段落まですっ飛ばしてください。
散々この半年間ジラしにジラして、フタを開けてみたらなんてことはない「ヒーローもの」だった。しかしここは笑いの狂人・松本人志。独自の解釈を加えた違うタイプの「ヒーローもの」になっている。「ウルトラマン」や「仮面ライダー」に代表される従来のヒーローとは一線を画し、より現実的に近いつくり。それでも「ヒーローもの」特有の「街ん中で暴れ回られて一般人はどうしてんだ」等の細かい突っ込みが生じる“ムリ”が払拭しきれていないが、監督・松本の視点を通して描かれた完全な「異色作」といえる。
異色といえば、松本演じるヒーローとその相手となる数々の敵も独特だ。ヒーロー役となる主人公、大佐藤は高圧電流を流されて巨大化するのだが、そのいでたちたるや、馬場・猪木全盛時代の悪役レスラーを彷彿させ、こん棒のようなものを手に持っている。そして敵もまた異様。昔、雑誌「Bart」(すでに廃刊)で連載していた松本が考案したキャラクターそのままの怪獣が登場する。ちなみに戦う場面だけはすべてモロバレCG。出演者のほとんどはここで起用されている。胴体がCGだから出てるのは顔だけ。ほんと「なんちゅう扱いだ」と驚嘆すること請け負い。
さっき「現実的に近い作り」なんていう書き方をしたのはこの映画、戦闘シーン以外はほとんどドキュメンタリー風なのだ。大佐藤を取材してその人となりを探ろうという取材側の目線。しかしこのつくりに関してはさして新鮮味はない。ドキュメンタリー風でいえば、ウディ・アレンが成功させているし(『カメレオンマン』)そのあともいろいろな亜流が出てきてるから大して驚きもしなかった。
とまぁ、そんな感じで映画は終盤に向けて進むがそのあと思いがけないラストシーンが。これは『監督・ばんざい!』と唯一の共通点であるが、こっちも壊れるのである。せっかくここまで結構楽しんで観てたのに、急に突き放されたみたいで正直困ってしまった。
それと場内は終始「爆笑」は一度も起らなかった。「噛み殺してる」雰囲気もなくせいぜい「クスクス」程度。要するにみんなかまえてるのがわかるんだ。何せあの松本が満を持して初メガホンをとり、前述の戦略で煽られたら、ああなるのは無理はないだろう。
テレビでのコントに見切りをつけ、映画に新たな活路を見出そうとしたのではと思われるこの処女作。未見で昔からテレビで慣れ親しんできたファンに説明すれば、早い話「撮影がスタジオからロケに切り替わり、なおかつスケールがでっかくなった」と考えて、劇場に足を運ぶのがよろしかろう。
ボン評価は…
☆ おもしろい ○まあまあ △つまらない ×クズ
の4段階評価です。
関連記事