2014年11月30日
【No.162】アンダー・ザ・スキン 種の捕食
「女が男を食い物にする」光景というのは映画やテレビドラマに限らず、ワイドショー色が強めのバラエティの再現VTRでも見かける子供でも知っているものである。艶かしい女がその色香で男を誘っては不幸な目に遭わせる。「食い物にする」は「だまし取る」ニュアンスに多く用いられる表現だが、これが文字通り本当に「食い物にする」となると話は違ってくる。B級テイストが一気に濃くなり観る者を選ぶSF的世界へと変わってしまう。
男を本当に「食い物」にする映画と来りゃ自ずと女エイリアンものと相場が決まっている。イイ女に化けて男の鼻の下が伸びたところでエサにする。エサのためなら何の惜しげも無く素肌をさらす。こうした女エイリアンに対する男性諸氏は多かれ少なかれ抑えがたい劣情があるのは否めない。しかしこれは単なるエロスとは少し違った感覚である。人間特有の感情というか理性を持っていない。ゆえに「羞恥心」というのを知らない。これが肝のような気がする。結局そうならないのがほとんどだが、もしかしたら思わぬ場所でポロリと出してしまうかもしれない期待と緊張感を持って目を見張る。AVでそういう類いのものが一定の人気を誇るジャンルとして確立しているのはそのせいだろう。ま、あれは羞恥心を捨てているのだが。
私が勝手に考えていることだが、露出度が高いお色気とB級は相性が良い。女囚アマゾネスものがその界隈だけ盛んなのがその証明であるが、女エイリアンものもビデオ店に足を運べば、『パイパニック』ランクの作品が陳列されている棚に際限なく溢れ出ているに違いない。しかし私は『スペース・バンパイア』と『スピーシーズ/種の起源』ぐらいしか知らない(『メン・イン・ブラックⅡ』もあるが「男を食い物にする」要素が薄いので除外)。『スペ・バン』のマチルダ・メイ、『スピーシーズ』のナターシャ・ヘンストリッジは掛け値無しにイイ女だ。男が引っかかるのも無理は無い。他の類似作も共通しているだろうが女エイリアン役はほぼ無名の女優が演じているのが通例だった。知らない顔の方が「得体の知れなさ」感がより際立つからだろう。
最近ひっそりと公開された『アンダー・ザ・スキン 種の補食』女エイリアンものの最新作であるが、『スペ・バン』、『スピーシーズ』から脈々と続く女エイリアンの系譜を受け継いだのがスカーレット・ヨハンソン。ハリウッドで今最もセクシーと言われる人材が演じるとはベタな気がするが。しかも近作の『LUCY』や『アベンジャーズ』などの出演歴からよほど派手なSFかと想像されるが、これが驚くほどの地味さである。それに難解かつ抽象的。状況や心情をセリフに盛り込んだり、余計なカットを加えたりといった説明過多な映画は批判されがちだが、本作は不親切というくらい説明がない。観る者を選び過ぎ。
映画は冒頭からいきなり杭を刺される。「この映画はそんじょそこらのSFとは違いますことよ」といわんばかりの姿勢が炸裂する。宇宙船が地球に飛来するような地球外生命体がやってくるお決まりの描写は無く、某SF映画のオマージュ丸出しの直列した惑星の画から始まる。映画ファンなら「ああ、あっち系かぁ」と観る姿勢を変えてしまうのである。
やっと人が出てきたとおもったらそいつはどこからともなくやってきたバイカーで気絶したのか死んだのかわからない女性を抱えている。大型のバンに放り込んで去ったかと思うと場面が変わり、地平線が見えない真っ白な空間で横たわっている女性から真っ裸のスカーレットが服をはぎ取る。衣服を身に着けバンに乗って街を流しスカーレットは街行く男に次々と声をかける。「ステキね」とあからさまな好意を相手に示し、まんまとバンに乗せることに成功すればエサ確定。さて、そのエサの補食方法がまた変わっている。どことも知らない真っ黒な空間に連れてこられ、衣服を一枚ずつ脱ぎながら歩くスカーレットの後を男も衣服を脱ぎながら付いて行くのだが、歩みを進めるほどに男だけ地面に沈んで行き最後は閉じ込められる。まさに「罠にひっかかる」のをそのまま絵にしたような補食方法だ。そして肝心のスカーレットの裸体は先代二人より幾分か見劣りしている。ちょっとぽっちゃり。乳房が垂れ気味で左右離れているのが残念だ。
映画は舞台であるアイルランドの晴れることが無い荒涼とした感じの風土のせいか暗い気分にさせてくれる。なかでも不快にさえしてくれたのがスカーレットが浜辺でサーファー風の男に声をかけるシーンである。会話のやりとりをしている向こうで1歳にも満たない幼児を浜辺に置いたまま波にさらわれた母を父が助けに行くのだがサーファー風の男も救助に向かうのだが結局救助は失敗。取り残されて延々泣き叫ぶ幼児をスカーレットと男はその場を去って行くのである。理性が無いスカーレットはまだしも男の行動の意図が分からない。しかも忘れ物を取りに2回訪れている。まだ幼児泣いていたし。もう心が痛むばかりで監督のモラルを疑ってしまった。
と、まぁ暗いわ地味だわ乳離れてるわでポカーンとすること請け負いだが浜辺のシーンを除けば退屈すること無くスクリーンに釘付けになったのは事実。時代の変化によっては化けるかもしれない本作。気になる方は一度チェックしてみるのもいいかもしれない。

評価は…
☆ おもしろい ○まあまあ △つまらない ×クズ
の4段階評価です。
男を本当に「食い物」にする映画と来りゃ自ずと女エイリアンものと相場が決まっている。イイ女に化けて男の鼻の下が伸びたところでエサにする。エサのためなら何の惜しげも無く素肌をさらす。こうした女エイリアンに対する男性諸氏は多かれ少なかれ抑えがたい劣情があるのは否めない。しかしこれは単なるエロスとは少し違った感覚である。人間特有の感情というか理性を持っていない。ゆえに「羞恥心」というのを知らない。これが肝のような気がする。結局そうならないのがほとんどだが、もしかしたら思わぬ場所でポロリと出してしまうかもしれない期待と緊張感を持って目を見張る。AVでそういう類いのものが一定の人気を誇るジャンルとして確立しているのはそのせいだろう。ま、あれは羞恥心を捨てているのだが。
私が勝手に考えていることだが、露出度が高いお色気とB級は相性が良い。女囚アマゾネスものがその界隈だけ盛んなのがその証明であるが、女エイリアンものもビデオ店に足を運べば、『パイパニック』ランクの作品が陳列されている棚に際限なく溢れ出ているに違いない。しかし私は『スペース・バンパイア』と『スピーシーズ/種の起源』ぐらいしか知らない(『メン・イン・ブラックⅡ』もあるが「男を食い物にする」要素が薄いので除外)。『スペ・バン』のマチルダ・メイ、『スピーシーズ』のナターシャ・ヘンストリッジは掛け値無しにイイ女だ。男が引っかかるのも無理は無い。他の類似作も共通しているだろうが女エイリアン役はほぼ無名の女優が演じているのが通例だった。知らない顔の方が「得体の知れなさ」感がより際立つからだろう。
最近ひっそりと公開された『アンダー・ザ・スキン 種の補食』女エイリアンものの最新作であるが、『スペ・バン』、『スピーシーズ』から脈々と続く女エイリアンの系譜を受け継いだのがスカーレット・ヨハンソン。ハリウッドで今最もセクシーと言われる人材が演じるとはベタな気がするが。しかも近作の『LUCY』や『アベンジャーズ』などの出演歴からよほど派手なSFかと想像されるが、これが驚くほどの地味さである。それに難解かつ抽象的。状況や心情をセリフに盛り込んだり、余計なカットを加えたりといった説明過多な映画は批判されがちだが、本作は不親切というくらい説明がない。観る者を選び過ぎ。
映画は冒頭からいきなり杭を刺される。「この映画はそんじょそこらのSFとは違いますことよ」といわんばかりの姿勢が炸裂する。宇宙船が地球に飛来するような地球外生命体がやってくるお決まりの描写は無く、某SF映画のオマージュ丸出しの直列した惑星の画から始まる。映画ファンなら「ああ、あっち系かぁ」と観る姿勢を変えてしまうのである。
やっと人が出てきたとおもったらそいつはどこからともなくやってきたバイカーで気絶したのか死んだのかわからない女性を抱えている。大型のバンに放り込んで去ったかと思うと場面が変わり、地平線が見えない真っ白な空間で横たわっている女性から真っ裸のスカーレットが服をはぎ取る。衣服を身に着けバンに乗って街を流しスカーレットは街行く男に次々と声をかける。「ステキね」とあからさまな好意を相手に示し、まんまとバンに乗せることに成功すればエサ確定。さて、そのエサの補食方法がまた変わっている。どことも知らない真っ黒な空間に連れてこられ、衣服を一枚ずつ脱ぎながら歩くスカーレットの後を男も衣服を脱ぎながら付いて行くのだが、歩みを進めるほどに男だけ地面に沈んで行き最後は閉じ込められる。まさに「罠にひっかかる」のをそのまま絵にしたような補食方法だ。そして肝心のスカーレットの裸体は先代二人より幾分か見劣りしている。ちょっとぽっちゃり。乳房が垂れ気味で左右離れているのが残念だ。
映画は舞台であるアイルランドの晴れることが無い荒涼とした感じの風土のせいか暗い気分にさせてくれる。なかでも不快にさえしてくれたのがスカーレットが浜辺でサーファー風の男に声をかけるシーンである。会話のやりとりをしている向こうで1歳にも満たない幼児を浜辺に置いたまま波にさらわれた母を父が助けに行くのだがサーファー風の男も救助に向かうのだが結局救助は失敗。取り残されて延々泣き叫ぶ幼児をスカーレットと男はその場を去って行くのである。理性が無いスカーレットはまだしも男の行動の意図が分からない。しかも忘れ物を取りに2回訪れている。まだ幼児泣いていたし。もう心が痛むばかりで監督のモラルを疑ってしまった。
と、まぁ暗いわ地味だわ乳離れてるわでポカーンとすること請け負いだが浜辺のシーンを除けば退屈すること無くスクリーンに釘付けになったのは事実。時代の変化によっては化けるかもしれない本作。気になる方は一度チェックしてみるのもいいかもしれない。

評価は…
☆ おもしろい ○まあまあ △つまらない ×クズ
の4段階評価です。
Posted by イリー・K at 22:53│Comments(0)
│【あ】