2014年09月25日
【No.156】怪しい彼女

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’14/韓国/カラー /125分
監督:ファン・ドンヒョク
出演:シム・ウンギョン ナ・ムニ パク・イナン ソン・ドンイル イ・ジヌク
久々の韓国映画である。取り上げる度にやれ一時期の勢いを失ったとか、やれ突如沸いたK-POPブームには国策的な薄ら怖さを感じるとか、私が感じた日本における韓国エンタメの浸透具合をまくらとして語ってたもんだが、もうそういう次元のものでは無くなったらしい。すっかり日本人に欠かすことが出来ない娯楽のひとつとして定着したといっていいだろう。そう認めざるを得なくなったのは韓流ドラマに今更ながらドハマりしているウチの母を見てのことである。ほぼ毎日見ている。BSチャンネルで放送されているあらゆるドラマを片っ端から見ており、テレビのリモコンといえばチャンネルを変えるぐらいしか使わなかったのが、今では予約をして好きな時間に再生して見るほど操作に慣れてしまった。おー、コワ。
ちゃんと見たことは無いけれど、韓流ドラマって世間から持て囃された当初から私は受け付けなかった。惚れたはれただのの恋愛沙汰にあの平べったい照明。象徴的だった成田に到着したペ・ヨンジュンに群がるミセスの皆様方、といったものがイメージを支配していた。従って私が観てきた韓国映画はそういったものとは対極にあるようなものを選んでいたのである。思えばここで取り上げた作品は『サイボーグでも大丈夫』、『母なる証明』、『グッド・バッド・ウィアード』、『渇き』、『悪魔を見た』とどれもドメスティックで血なまぐさい。しかしここ最近になって韓国映画はそれだけが能ではないことを私に知らしめてくれたのが『サニー 永遠の仲間たち』であった。青春懐古モノに一瞬眉をひそめつつもCSで流れていたもんでどれどれ暇つぶしにと見始めたものがあれよあれよと引きずり込まれて終盤ではもうどうにでもしてという生娘のような心境で画面に杭付けになってしまった。まず序盤で自ら韓流ドラマを揶揄しているところで警戒心を解いたのが大きかったがあの素晴らしさったらない。如何に素晴らしかったかはまた別の機会に譲とするがそこで主役を演じたシム・ウンギョンが出ているということで劇場に足を運んだのがこの『怪しい彼女』である。
結婚後すぐ夫に先立たれ、女手一つで息子を育てた70歳の婆さん。しかし昔気質で腕っ節が太くその上毒舌の持ち主である婆さんには日夜息子家族は手を焼いていた。しかしある時「母を施設に入れよう」と家族で話し合われているのを耳にし落胆。買い物帰りにふと見つけた写真館で遺影として残そうと写真を撮ると50歳ほど若返ってしまう。若さを手に入れた婆さんはかつて同じ年頃の時には貧しくてできなかったあらゆることに実行を移す。
一夜にして肉体に異変が起こる設定の話は数あれど、性別や年齢が変わるものに関しては決して叶うことが無いゆえに一度でも願望を持ったことがある人から見れば無条件に楽しく観ることが出来る。それを前提とした上でもやはり今まで既視感ありありな手垢の付いたものであることは否めない。少々ベタなところがあったりするし、孫が所属するバンドに若返った婆さんがたまたまボーカルとして加わるんだが、その後のバンドが順風満帆すぎないかとか、若返らせた写真館の店名が「青春写真館」ってのはねぇだろうとか突っ込みたくなるところもあったりはする。
しかしこうした作品のアラは、若返った婆さんことシム・ウンギョンのコメディエンヌとしての力の前ではすべてを許せてしまう。何なんだろうかあの愛らしさは。ルックスとしてはお世辞にも完璧な美人とは言えないし、角度によっちゃあ顔がちょっと森三中・黒沢が入っている。ちょっとわざとらしい匂いもあるんだがそれも含めて愛らしさに転換されるんだろう。きっと本国では同性からも人気が高いと思う。セックスアピールに適した人材ではないから男性からもエロい視線は無いし、同性から程よい好感度を得ている。まだ二十歳らしい彼女、このままずっとキャリアを重ねて行けば、10年後には日本でいえば小林聡美になっていると予言しよう。

評価は…
☆ おもしろい ○まあまあ △つまらない ×クズ
の4段階評価です。
Posted by イリー・K at 20:53│Comments(0)
│【あ】