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2014年02月27日

【No.149】47RONIN

【No.149】47RONIN
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’13/アメリカ/カラー /121分
監督:カール・リンシュ
出演:キアヌ・リーブス 真田広之 柴咲コウ 浅野忠信 菊地凛子 赤西仁


 久々であるな。観終わって「ばーか」ってな感慨を持って劇場を出たのは。映画興行では最も書き入れ時と言われるお正月シーズンに登場し、年が明けるや沖縄県内では早々と退散した『47RONIN』である。よく持ったほうだろう。

 近年ではあまり見かけなくなったが、かつて年末年始の風物詩であった「忠臣蔵」にリメイクを施した本作。キアヌ・リーブス主演で制作決定の一報を耳にしたときには「えっ」と我が耳を疑ったが、しばらくして脇役に日本人キャストで固めるという続報に「えーっ!!!」と驚いた。これは『用心棒』でいうところの『ラストマン・スタンディング』、『子連れ狼』でいうところの『ロード・トゥ・パーディション』のように舞台を欧米スタイルにするのではなく、直球勝負に出たのである。しかも中国人や韓国人など混ぜるというハリウッドならではの暴挙を使うのではなく純日本人で挑もうという姿勢はいたく誠実を感じた。でも本作について買えるのはそこまで。出来上がった代物は「見るも無惨」といったものできっとアメリカ国内では笑われたことだろう。日本で笑われてるぞコレとか言って。しかし、海外で描写される勘違いも甚だしいいわゆる「トンデモニッポン」に私たちが接したのは今に始まった事ではない。他の国々に見られて幾度も無く国民感情を蹂躙されてきたことか。だが「肩にカメラをぶら下げて眼鏡に出っ歯の日本人観光客」など遥か遠い昔のこと。すっかり免疫がついて今では冷笑に付す余裕を得るに至っている。だが、『47RONIN』については冷笑など通り越して何事も無かったかのように黙殺しようとする動きがある。締めに「これが、日本で代々語り継がれる忠義の物語である!」と仰々しく謳われても劇場にはせせら笑いすらなく、ただ沈黙が支配しているだけである。多分この先は『ハンテッド(‘95)』と同じ末路を辿るであろう。

 映画がこんな有様になるのは特報映像がお披露目されたときからほぼわかっていたことである。だから戦でもないのに兜を身につけたやつらがそこら辺にウロチョロいたり、腰元の化粧が志村のバカ殿そのものだったり、その他諸々の枝葉末節を小突くつもりはない。そんなことより本来のオリジナルを翻案できていないどころか、オリジナルには存在しない余計なものを混ぜ込んで訳が分からないものになっている。

 赤穂藩主・浅野内匠頭は吉良上野介に日々イビられ続け、とうとう堪忍袋の緒が切れた浅野は江戸城内で吉良に対し刃傷沙汰を起こす。浅野は即刻切腹を命じられ浅野家は取り潰し。失職した大石内蔵助以下の赤穂浪士たちは君主への忠義を実行せんと吉良への仇討ちを計画する。『忠臣蔵』に思い入れは無い私でもわかる一般に伝わっているおおよそのあらすじはこんなところだろう。

 そこに「余計なもの」として赤穂浪士には直接関係無いキアヌ演じるカイ(イギリス人とのハーフなんだと)と柴咲コウ演じる浅野の娘の淡い恋模様なんかを絡めてくる。赤穂浪士がピンチに陥ったり何かしらの局面を迎えるときは大抵カイが居て欲張りなほどの活躍を見せる。浪士たちの立つ瀬がないというものだ。それに考えてみても全くわからなかったのは主要人物である大石、吉良、浅野の年齢順をなぜ変えたのか。オリジナルでは吉良>大石>浅野となっているのを本作では逆にし、吉良<大石<浅野となり吉良が若く、浅野が年老いている。娘がいるからということか。それならば娘にしなくて若いままで妹がいる設定にしなかったのか。一方の吉良は年老いてこそ吉良である。いい年して意地悪なキャラというのは現代の企業社会でどんな手を使っても権力にしがみつく重役に通じるような「必要悪」のアイコンなのにそれを排して若い浅野忠信が演じている。では、誰でもひれ伏すような特別な力でも持っているのかというとそうでもない。むしろ弱っちい。これでは盛り上がりに欠けるのでお話しにならないだろう。そこで登場するのがオリジナルにはない3人目の登場人物、魔女役の菊池凛子である。常に吉良に寄り添い、良からぬことをそそのかしては妖術を使い敵対する相手を翻弄させる。劇中で唯一の妖術使いである彼女はダークファンタジー風味に仕立て上げた本作のすべてを司る象徴的存在だといっていい。ファンタジーの類いが苦手なせいもあるが私にはコイツがとにかくうっとうしい。役柄としてじっとしていられない性格なのか常に艶かしくクネクネした動きをしている。ポールダンサーかお前は。

 映画のラスト、キアヌの決戦シーンになるとそこには忠臣蔵の欠片は無い。オリジナルの登場人物はだれひとりとしていないから。そんなわけで誰の目から見ても明らかな失敗作である本作、「過去に作られた忠臣蔵のリメイク作」と聞いて山のようにある関連作から本作を思い出すことは難しいだろうが、「47RONIN」と聞けば、瞬時にクネクネした菊池凛子が脳裏に浮かぶであろう。クネクネ凛子、「クネリンコ」と呼ばせてもらおう今後は。
【No.149】47RONIN
評価は…
☆ おもしろい ○まあまあ △つまらない ×クズ
の4段階評価です。


Posted by イリー・K at 03:13│Comments(0)【ふ】
 
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