2013年09月22日
【No.139】ホワイトハウス・ダウン

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’13/アメリカ/カラー /137分
監督:ローランド・エメリッヒ
出演:チャニング・テイタム ジェイミー・フォックス マギー・ギレンホール ジェームズ・ウッズ
シリア情勢で揺れているアメリカ。化学兵器の有無をめぐってロシアと対立し、シリア攻撃を踏みとどまったりして日々続いている緊張のなか米大統領はさぞかし心労が絶えないことであろう。そんな現実世界と並べるのは無神経というものであるが、映画の中の大統領も大変である。住処であるホワイトハウスが乗っ取られて戦うはめになっちゃうんだから。
アメリカ有史以来、難攻不落のイメージがまとわりついてるせいか、かつて映画の中では宇宙人にしか攻撃されていなかったホワイトハウスだが、とうとう同じ人類に攻撃される時代を迎えるようになった。それはありえないもの(宇宙人)から「あるかも」という確信が無い不安が広がっている表れではないのか。安直な考えだがとにかく、そんな宇宙人から人類に取って代わったホワイトハウス陥落映画が奇しくも今年2本が公開された。1本目は6月踏切の『エンド・オブ・ホワイトハウス』そして2本目が今日の本題である現在公開中の『ホワイトハウス・ダウン』である。
監督を務めたのはアメリカ映画、いや全世界の映画史上に燦然と輝くキング・オブ・デストロイヤーとしておなじみのローランド・エメリッヒ。劇中で破壊描写をしつくしているのは彼を置いて他にいないだろう。巨大宇宙船であらゆる世界の都市を焼き尽くし(『インデペンデンス・デイ』)、巨大トカゲがニューヨークを所狭しと暴れ回り(ハリウッド版『GODZZILA』)、全世界を水浸しにして凍らせてみたり(『デイ・アフター・トゥモロー』)、かと思ったら太古の時代にマンモスと厚化粧のアマゾネスを共存させてみたり(『紀元前一万年』)、ついにはマヤ暦の滅亡説をオカズに地球ごと破壊したり(『2012』)と、超大規模な絵空事の名手である。まぁ言い換えればスペクタクルなバカ映像の作り手であるが。そんな人が撮った映画だから「ホワイトハウス陥落!!」と全世界が騒然となるような話でもものすごくスケールが小ちゃく感じてしまうが、破壊したがるノリは変わらないだろうと今回は鑑賞をスルーしかけたところで友人から思わぬ感想を持って薦められたのである。それは「とても感動した」とのことだった。え、そういう映画なのか?実は本作のひとつ前に『もうひとりのシェイクスピア』というフィルモグラフィからは想像もつかない地味な文芸映画をこっそり撮っていて、あまりのつまらなさに迷走し始めたのかと危惧していたものだから、それが続いているのか確かめるため劇場へ足を運んだ。
いやぁ、私が「感動探知機」だとしたらかなりの欠陥品だ。友人には申し訳ないけどそれらしいところはどこにも見られなかった。優良品である友人が感知したのはおそらくテロリストに捕らえられながらも屈することなく抵抗を続けた主人公の娘のひたむきな姿とか親子愛みたいな部分だろう。それは今までの作品でも「由々しき事態(テロ、戦争、災害、事故)に翻弄される親子」という図式は一貫していて、それぞれに活躍を見せているから今回もいつものことだと見守っていたんだが私にはあの娘がどうもスタンドプレイが過ぎるように見えた。子供のくせにやたらと機転が利いている、というか小賢しいんだ。『ホーム・アローン』から続く「アメリカのガキってやつぁ」みたいなタイプを継承している。最後主人公を喰っちゃうあの活躍には「マジかよ」の感しきりであった。それにしても片や感動から私みたいな冷淡まで反応が違ってくるんだから世界というのは広い。
それよりも観る前に抱いていた心配事は本作を観て吹き飛んだ。「さすがはエメリッヒここにあり」な逸品となっていてひとまず安心である。ひとつの施設内を舞台に敵とヒーローが追いつ追われつな戦いを繰り広げる『ダイ・ハード』型アクションの雛形からは脱しきれてはいない上、ご都合主義も甚だしい我が目を疑う懐中時計を使った古典ネタやいたるところに多少の粗は目立つものの、規模は劣るがいつものバカさ(拙い部分も含めて)が全篇に冴え渡っている。なかでも飛び抜けているのが広大な庭でのチェイスシーンだろう。大統領専用護送車でなんとか脱出を図ろうとするが、すぐさまテロリストに見つかり軍用ジープで追われ、青い芝生の上を疾走する。装備した銃器でしこたま銃弾を浴びせ、無数の穴で埋め尽くされながらも護送車は裏口ゲートへ突っ走る。近距離で捉えた映像はなかなかの迫力であるが、マスコミの生中継で送られる遠距離で捉えた映像に切り替わると掛け値なしのバカ映像に早変わりする。噴水などの障害物を避けながら芝生の上をただグルグル回っているだけ。政権安泰を賭けた命がけの手段とはいえ主(大統領)が自ん家(ホワイトハウス)で何やってんだってな感情が湧き上がろうというものだあの映像には。
あと、緊急時に露呈される「プレジデントギャグ」やコメディリリーフを担ったと思われる施設ガイド役の配置などのお気楽さもバカ度アップに一役買っている。

評価は…
☆ おもしろい ○まあまあ △つまらない ×クズ
の4段階評価です。
Posted by イリー・K at 17:23│Comments(0)
│【ほ】