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2013年06月26日

【No.133】悪魔の毒々モンスター 他1本

【No.133】悪魔の毒々モンスター 他1本
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「悪魔の毒々モンスター」
’84/アメリカ/カラー /92分
監督:マイケル・ハーツ ロイド・カウフマン
出演:アンドリー・マランダ ミッチェル・コーエン ジェニファー・バプティスト シンディ・マニオン

「チキン・オブ・ザ・デッド/悪魔の毒々バリューセット」
’08/アメリカ/カラー /103分
監督・脚本・製作総指揮・出演:ロイド・カウフマン
出演:ジェイソン・ヤチャニン ケイト・グレアム アリソン・セレボフ ロビン・ワトキンス


 私が幼少期を過ごした1980年代は、B級ホラーが花盛りであった。『シャイニング』のような格調高いものとは違い、とにかく娯楽に徹し、人体破損など当たり前の残酷描写に心血を注ぐ。さらにインディペンデント(独立)系となると「ド」が付くほどの下ネタを絡めることもやってのける「悪趣味」が加わる。30(歳)過ぎてようやくYoutubeで見ることができた『吐きだめの悪魔』(‘86)はその極みのような映画で、古すぎて劇薬と化したウイスキーを飲んだホームレスがパステルカラーの体液をまき散らしながら溶けたり、別のシーンではちぎれたチ◯ポコでフットボールという意味不明なものがあったりする。まぁ、全篇お下劣の一言に尽きるってなもんで、「時代の遺物」として見る分には楽しめる1本だった。

 コレと並んで同時期に公開されたのが『悪魔の毒々モンスター』。監督を務めるロイド・カウフマンが率いるトロマという映画会社の名を世界に轟かせた映画である。その後、数々のトロマ映画が『悪魔の毒々◯◯◯◯』として日本でも公開され(映画はそれぞれ関連性は全く無い。セガール映画と同じパターン)、1990年の『カブキマン』で日本人から完全なる失笑を買い、それ以降日本で新作を観ることはほとんど無くなったが、この度日本で久方ぶり新作公開と併せて、この『毒々モンスター』もリバイバル公開と相成った。

 その日、台湾原住民の反乱を描いた切り株映画『セデック・バレ』のヘビーな4時間半で疲労困憊であったにも関わらず、どういうわけか魔が差して観てしまった。あの頃ブイブイ言わせていたトロマも十年以上のブランクには敵わなかったか観客は私を含めて5人であった(私より前方の席に観光客とおぼしき男女3人組と男性客1人)。

 スポーツジムで清掃員として働くメルヴィン君はいつも不良グループからバカにされるいじめられっ子。ある日、不良グループが常連客と結託しメルヴィン君を騙しにかける。まんまとハマり、周囲から笑われるなか失意のあまり窓から飛び降り、たまたま駐車しているトラックに積んであった工場廃液のドラム缶の中へ。廃液まみれの体はみるみる突然変異を起こし毒々モンスターに変身。最愛の母からは息子ではないと拒絶され孤独に陥るが、廃液の副作用によって芽生えた悪への闘争本能と突然変異で手に入れた怪力で不良グループや街の悪党どもを残忍な手で成敗する。そのなかで助けた盲目の女性サラと結ばれ、メルヴィン君もとい毒々モンスターは街のヒーローとして市民から喝采を浴びるのであった。

 レンタルビデオでの初見以来十何年ぶりかの再見となった本作は「無修正完全版」ということでR18(成人指定)になっているが、オリジナル公開当時はマドンナ主演の『上海サプライズ』と併映の一般公開だった。そんな箇所など不問に付すほどおおらかな時代だったのか。しかし無修正特別版にはそれらしいところは見られなかった。性器などひとつも写ってないしオッパイはオリジナルと同様に大放出されたままだ。しかしオッパイだけで成人指定は考えにくい、となると指定の対象はシモ方面ではなく、残酷描写だろう。顔がグシャっとなったアレ。まぁそれはいいとして改めてこの映画を観てみると雑でなおかつ粗い。変身後のメルヴィン君を拒絶してたはずのお母さん、いつ本人だと認めたんだろう。あとサラとのセックスシーンが2回流れてたような。意図的な編集には見えず映写ミスかと思ったら本当の本編らしい。初見時から思っていたが、全篇に渡る雑さや粗さは“テイスト”として敢えてそうした確信犯なんだろう。「俺たちにできるのはコレしか無い」という気迫ささえ伝わってきて、その思いっきりの良さはかえって私には好印象だった。

 勢いついでに翌日も観に行った『チキン・オブ・ザ・デッド/悪魔の毒々バリューセット』。新作となると俄然上がった期待値が客足にも反映されたんだろうか。観客は私を含め7人であった。

 舞台はフライドチキンのチェーン店。怪しいチキンを食べたばっかりにゾンビもどきに変貌した人々に取り囲まれ、店員たちが脱出を図るサバイバル劇。『毒々モンスター』公開から四半世紀、この作品ではトロマはどう変化したのか(他にも量産してるのにこの2本だけ比べるのは乱暴な話だが)。粗さや雑さ、そして下衆いノリはそのままに社会風刺をこれでもかと盛り込んでいる。『毒々モンスター』でもそれらしいものは見受けられるが全く比にならない。ファストフード依存や銃社会、人種差別やテロ、格差社会その他諸々アメリカが抱える問題が至るところで使われてゲップが出そうである。更にはこれに飽き足らず、よせばいいのに所々にミュージカルも挿入している。出来は案の定「入念なリハ無しで撮ったミュージカル」という感じ。限りなく即興に近い。そして何より驚いたのは、必要とあらばどんなにチャチいものでも作られるCG無くしては映画制作は難しいかと思われるこの時代、全くそれに頼っていないのである。本当に2008年(制作当時)に作られたのかと疑うくらいの堂々たるアナログっぷり。時代に迎合せず作りたいものを作るというのはインディペンデント系の基本精神だとは思うが、ここまで我が道をひた走るロイド・カウフマンには気骨さがあふれている。トロマあっぱれだ。

悪魔の毒々モンスター
【No.133】悪魔の毒々モンスター 他1本
チキン・オブ・ザ・デッド/悪魔の毒々バリューセット
【No.133】悪魔の毒々モンスター 他1本
評価は…
☆ おもしろい ○まあまあ △つまらない ×クズ
の4段階評価です。


Posted by イリー・K at 09:07│Comments(0)【あ】
 
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