2013年01月13日
【No.125】その夜の侍

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’12/日本/カラー /119分
原作・監督・脚本:赤堀雅秋
出演:堺雅人 山田孝之 新井浩文 綾野剛 谷村美月 安藤サクラ 田口トモロヲ
あるテレビ番組に人手が足りないということでADとして呼ばれた。若い女性を視聴者層に据えて、司会を兼ねたレポーターの蒼井そらが、巷で話題の流行スポットへ赴いてレポートをし、その模様を収めたVTRをスタジオで蒼井以下後ろに並べられたわけわからん若手女性タレントと見てあれこれトークを繰り広げる「何とかのブランチ」みたいな内容。で、そのリポートのスタッフ助手として参加したのである。取材当日。訪れたのは某ネイルサロン。専属のネイリストに爪を塗ってもらいソツなくリポートをこなす蒼井であったが、回っているカメラの前で今の地上波では流せないことをやりはじめ、いつのまにかAVと変わらない収録現場と化したのである。そして遂にはADであるはずの私が汁男優として狩り出される始末。ひととおり収録が終わったあと、編集所へ行くのかと思いきや、ある寂れたパーラーに到着し、ガラスケースに積まれたちっちゃいチーズバーガーを買うわけでもなく、主人を務めるおばさんにVTR素材を売りつけた。どうやら放送では使わない「AV」の部分を裏ビデオ用として売買していたのである。
私が見た夢の話はここまでにしといて、この番組のスタジオ収録パートで蒼井と共に務める司会者席に堺雅人がいたのである。今やTVドラマや映画に出まくりの誰もが認める正統派の人気俳優。しかし、そういう人ほど興味が無い私はまともに見たことが無かった。にも関わらずなぜ不意に夢の中のあの場所にいたのか。いかにもそんな感じの番組やってそうだなぁという勝手なイメージがどこかにあったのだろう。それがあの席に座らせたのである。何ら違和感無くその場に馴染んでるように見えたし。がっつり見たことがないゆえ、俳優・堺雅人の何たるかをよく知らない私が持っていたイメージの所以は方々から指摘されているあのニヤケ顔のルックスのみ。以上が私の堺雅人観である。
堺雅人とこれまた興味が無い映画に出ずっぱりの山田孝之がダブル主演した『その夜の侍』という映画は当然ながら私はノーマークだった。しかし、ふと目にした予告編一発で俄然観たくなった。妻を轢き逃げによって失った堺が、その犯人である山田に復讐せんと決行日を予告した脅迫状を毎日送りつけ、そうして迎えたに対峙する2人の顛末。これは面白そうだ。
実際観てみたら、それほどサスペンスフルな内容ではなかった。もちろんサスペンスの要素はありはするのだが、別の要素に重点を置いているせいで、尻すぼみ感があったのは否めない。ではそれよりも優先させた別の要素とは、ある出来事をきっかけにどこかしら内面が歪んでしまった人間。本人にとっては深刻でも他人の目からはおかしく見えてしまう悲喜劇である。それを主演2人に与えられた役柄によって進行するが、このキャラクター造形には見入らされてしまった。
まず、犯人の山田はとてつもないろくでなしである。「腹減った」「ウンコしてぇ」「セックスしてぇ」と自分の欲をすぐ口に出し、気に入らないことがあれば、相手が女性であろうと手を上げる。社会上の償いはやったという理由からか、故意では無いしろ人を殺めてしまったという自覚は微塵も無く、本能の赴くまま好き勝手に行動する男である。
それよりもすごいのは堺雅人である。画期的であるほどにキモく、その上イタい。「キモ度」アップに欠かせない銀ブチメガネもしっかり押さえている。これまでもそういう類いのキャラクターというのはしばしば見られたが、主なわかりやすい例で言えばオタク役でコメディリリーフの役割でしかなかったと思う。しかし、堺の場合は思わず憐れんでしまうものがある。妻に先立たれて数年経っても、拭いきれない未練と執着の凄まじさにそれが表れている。キモさにおいてあまり前例が無い分免疫が備わってないゆえに強烈に映るのだろう。それだけにズルい役柄ではある。きっと香川照之あたりは欲しがるに違いない。

評価は…
☆ おもしろい ○まあまあ △つまらない ×クズ
の4段階評価です。
Posted by イリー・K at 17:03│Comments(0)
│【そ】