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2012年06月19日

【No.117】メン・イン・ブラック3

【No.117】メン・イン・ブラック3
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’11/アメリカ/カラー /108分
製作総指揮:スティーヴン・スピルバーグ、G・マック・ブラウン
監督:バリー・ソネンフェルド
出演:ウィル・スミス トミー・リー・ジョーンズ ジョシュ・ブローリン


 国家極秘機関MIBの捜査員K(トミー・リー・ジョーンズ)とJ(ウィル・スミス)の活躍を描くSF映画の第3弾である。

 私はこの『メン・イン・ブラック』(以下『MIB』)がことのほかお気に入りで、ストーリーやキャスティング、映画の中に映っているものすべてが大好きだ。2度劇場へ観に行った数少ない映画の1本である。

 正体がバレぬよう人間に化けて生活する宇宙人、そしてそれらを監視する役目を負うアメリカの国家機関という設定から、硬派な映画評論家(「キネ旬」に寄稿してるような人)あたりが指摘しそうなアメリカとは切っても切り離せない「人種差別問題」の風刺的ジョークが、映画の隅々に散りばめられているのだろうが、私にはどうでもよくて、秘密裏に活動する国家機関の「いかにも」な感じがとても面白い。「世界の警察」でありながら国民の目を欺くことも厭わないアメリカが目に見えるようで非常に説得力がある。その「いかにも」の起因のひとつは都市伝説の宝庫アメリカであるが故であろう。その代表例がかの有名な「ロズウェル事件」を始めとする政府がらみの宇宙人である。そこに着目した時点でこの映画は成功しているといえる。

 不穏な動きをした宇宙人は、すぐさま鎮圧され、その場を目撃した通行人には棒状の記憶抹消装置(劇中では“ピカッ”と呼んでいる)で処理される。宇宙人の存在を知られぬよう国民を欺くにはこれが唯一の手段である。しかし処理を免れた目撃者は周囲に言いふらし、確証が無いままいつしか都市伝説となって一般に流布する。なるほどうまい作りだ。

 キャスティングの妙にも唸らされる。トミー・リー・ジョーンスとウィル・スミスの組み合わせは刑事ものによくあるバディムービーの流れを汲んでいる。白人と黒人という相性の良さは『夜の大捜査線』『48時間』『リーサル・ウェポン』でも証明済み。それに忘れちゃいけない悪役宇宙人ビンセント・ドノフリオの化けっぷり。あの狂気を湛えた目つきは、デブ兵を演じた『フルメタル・ジャケット』でのキューブリック仕込みがあってこその芸当だ。

 とまぁ、97分という上映時間からストーリー運びに若干の粗さがあるのがたまにキズではあるが、これだけ異常に気に入った分、5年後に作られた『MIB2』にかける期待値は相当なものであった。しかし観てみたらこれが最悪。前作の良さを自らすべてブチ壊してくれた。前作を超えるには一度壊さないといけないみたいなセオリーがあるが、壊すものが全然違うと思う。映画を見始めてから7分、巨大ミミズが出てきたところで一気に冷めてしまった。あれは宇宙人なのか?取り締まられるほどの知性を持ったものなのか?もとから地球に生息しているUMAの間違いではないのか?そんな冒頭から始まり、あとはことあるごとに“ピカッ”の乱用である。あれさえありゃ何でも事は片付くとでも思ってるのか。洗脳と捉えかねない使い方までしてるし。で、こりゃどう考えても処理できる騒ぎではないだろうと思った所に「自由の女神」である。宇宙人潜伏の秘密は自由の女神によって保たれているということか。呆れ返る事この上ない。他にも記憶復活装置が登場するなど後付けサクサクぶりに失望しっぱなしであった。

 そんなわけで1作目と2作目で両極端に位置するこのシリーズ。今度の3作目では吉と出るか凶と出るか期待半分、不安半分の複雑な心持ちで観に行った。

 結論から言おう。まぁ、良かったんじゃないかな。こう歯切れが悪い言い方になってしまうのは2作目がヒドすぎたので、それだけプラスに働いたというのもあるが、導入部分からして無理があるのだ。

 今回はタイムスリップという新たな手を使って展開される。KとJは日々監視活動に勤めるなか、ある日突然Kが姿を消す。探し回るJであったがいつの間にかKは帰らぬ人となっていた。昨日今日の事ではなく40年前に。訳が分からぬまま真相を追っていくと、どうやらKに恨みを持つ人物が過去にさかのぼって亡き者にしたことを突き止めたJは、その人物を追うため同じ時代にタイムスリップする。なかなか期待を煽られる導入部だが、私はここで立ち止まった。JをMIBにスカウトしたKがいなかったらJは前職の刑事のままではないのか。またスカウトしたのがKとは別の人なら、その人間を出さなきゃならないのにそれらしい描写も無い。私だけに限らず同じ疑問に立ち止まった方は多いはずだ。しかしこれを仏の心で見逃せば、そのあとは大した問題にはぶち当たらずに、まぁまぁ楽しめる。


 歴史的描写なんかに重点を置いていない、ただの娯楽映画にこういうこと言うのは無意味だが、当時の世相ともっと絡ませても良かったんじゃないかとは思う。タイムスリップする先は1969年のアメリカである。確かにそこにはヒッピーな若者が登場するし、悪役宇宙人はバイクに股がり『イージー・ライダー』みたいな風体。そして映画最大の見せ場が、この年最大の出来事であるアレとリンクしたりしているのだが、ベトナム反戦やら暴動やらで混沌としていた時代なのに、それらに遭遇しないのが不思議だ。Jがブラックパンサー党に入りかけて一悶着といった小ネタとか差し込めなかったものか。

 まぁ、そんな個人的わがままは置いておくとして冒頭の難点以外はわりあい楽しい映画になってるんで及第点としておこう。シリーズのファンからして見れば、主題曲がウィル・スミスじゃなかったり、前2作ではお約束のアイツが出ていなかったりとちょっと淋しいが、本作に大いに貢献している若きK役のジョシュ・ブローリン。よく言われている通り本当によく似ている。必見ポイントと言ってもいいクリソツ度である。

【No.117】メン・イン・ブラック3
評価は…
☆ おもしろい ○まあまあ △つまらない ×クズ
の4段階評価です。


Posted by イリー・K at 22:00│Comments(0)【め】
 
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