2011年01月29日
【No.103】エクスペンダブルズ

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’10/アメリカ/カラー /103分
監督・製作・主演:シルベスター・スタローン
出演:ジェイソン・ステイサム、ジェット・リー、ドルフ・ラングレン、ランディ・クートゥア、テリー・クルーズ、ミッキー・ローク ブルース・ウィリス、アーノルド・シュワルツェネッガー
今、真のアクションスターと呼べる人っているんだろうか?このアタマに「誰もが知ってる」を付け足すと、今の時代では愚問になってしまう。
昔の役者は得意とされる分野がはっきりと分かれていた。古くはラブストーリーで言えばハンフリー・ボガード(『カサブランカ』『麗しのサブリナ』)やクラーク・ゲーブル(『風と共に去りぬ』『或る夜の出来事』)、ホラーで言えばクリストファー・リー(ドラキュラ俳優)やアンソニー・パーキンス(本人の意志に反して“サイコ”俳優にされた)といったように、それぞれ活躍できた時代だった。特にアクション系は他と違って体を張る分野だけに専門性がきわめて高く、それをこなせる役者がアクションスターになり得た。そもそも「アクションスター」なんていうジャンル名にスターをくっつけた称号なんて他にはないだろう。いつしかホラー専門はすっかり衰退の一途をたどり、ラブストーリー専門は相変わらず甘ったるいなか、アクションスターは時代の移り変わりとともにやることがハードになっていき(それに並行してスタントマンの需要も高くなっていったが)、体格もマッチョになっていった。その最たる人がスタローンである。この“イタリアの種馬”はアクションだけに限らず、脚本や監督もこなすただのマッチョではない訳だが、これに追走するシュワルツェネッガーとのちに州知事になるこれまたただのマッチョではないスーパーマッチョ2巨頭が互いにしのぎを削っていた70年代後半から80年代が「誰もが知っているアクションスター」が第一線で生き長らえた最後の時代となった。それからというもの、幾人ものアクションスターが第一線に現れてはすぐに消えていった。スタローンやシュワルツェネッガーのように第一線で持続するのは困難になった。その要因は他でもない「映像技術の発達」である。
周知の通り、90年代に入ってから、それは目まぐるしい進歩を遂げ、あらゆる表現が可能になった。そして今ではマッチョじゃなくても誰でもアクションがこなせる時代である。アンジェリーナ・ジョリーが激走する車から別の車に飛び移ったり、キアヌ・リーブスが逆エビ反りをしたり、モーガン・フリーマンが拳銃を乱射したりすることはたやすいことだ。いや、拳銃はモーガン・フリーマンじゃなくても誰でも撃てる。しかし映像技術云々からは離れるが、ジジィがいっぱしに拳銃を撃ちまくるという絵ヅラは昔の映画ではあまり見かけなかった。こういった一例を含めて、いろんな役者にいろんなものを求めるようになり、役者によって得意分野がはっきり分かれていた時代などとうの昔に無くなってしまったのだ。そんななかでアクションだけが命のアクションスターは第一線で知名度を上げる前に畑をさんざん荒らされたあげく、底辺へと追いやられていく。そこでなんとか踏ん張っているセガール、そこへもうそろそろヴィン・ディーゼル(『トリプルX』『リディック』)が加入するかも。そしてそこにすらいなくなったヴァン・ダム。これが今のアクションスターたちのはかない姿である。
スタローンも例外ではなく、21世紀に入ったあたりから迷走を続けていた。それが最も際立っていたのは『スパイキッズ』の何作目かに悪役で出た時だろう。かつてのオーラはまるでナシ。誰かが引導を渡すべきときが近づいてきてるなと感じていたが、あきらめないのがこの男。還暦を迎えようかというときにロッキーとランボー、二つの持ち玉を続けて投入し、苦し紛れのカムバック。そしてその勢いを借りて作り上げたであろう、今回の『エクスペンダブルズ』である。アクションスター不遇の時代を嘆いたのか、復権ののろしを上げるべく立ち上がったスタローンは主要キャストのほとんどをアクションだけで食っているような役者ばかりを配し、映画の中で傭兵軍団を結成。南米の独裁国家を転覆すべく戦いを挑んでいく。
あのころの栄光をもう一度といわんばかりにスタローンは頑張っていた。長距離を全速力で走りきり、跳び、蹴り、殴り、また走る。64歳だというのに。一般男性で言えばジジイと言われても差し支えない初老である。普通の64歳がやったら3日寝込むことは間違いない。老体にムチ打って、こめかみに血管浮き立たせてアクションをこなす隊長スタローンに負けじとジェット・リーを始めとする軍団のみんなも頑張る。もちろんカーチェイスや爆破シーンも手抜かり無し。まさにアクションのイロハがすべて詰まった映画になる、と思っていたが、あれあれあれと、おかしな方向に行き始めた。この独裁国家、“国家”というわりにはあまりに弱い。構成員はザコばかりである。数こそ圧倒的に優勢だが、兵力が傭兵軍団の方が上を行っている。ガンマニアでも何でもない素人目の私から見ても差があることがわかる。国家ともあろうものが有事に備えていろんな武器揃えてそうなものなのにせいぜい機関銃ぐらいである(もっとスゴい武器あったら見落としてたということで謝ります)。そこへとてつもない威力を持ってそうな銃器を装備した傭兵軍団が攻めて来るもんだから、ほぼやられっぱなし。いや、肉弾戦で互角にまで持ってったりするところもあるのだが、総合的に見たらかすり傷程度を与えただけで一進一退というまでには及ばない。コテンパンにやられる独裁国家側にちょっと同情すら感じた。これは前作『ランボー/最後の戦場』にも通ずるものがある。敵側からどデカイ銃器を奪い取ったランボーが片っ端からザコ兵めがけて撃ちまくり次々と肉片と化していくシーンには心の中で「やめたげて〜っ!」と叫ばずにはいられなかった。そんな同情も手伝って「スタローンとゆかいな仲間の殺戮行脚」ってな印象を除けば、アクション映画としては充分堪能できるだろう『エクスペンダブルズ』。早くも次回作の準備に取りかかっているそうで、スタローン以下仲間たちが動き出している。そこにヴァン・ダム加入か?というちょっとうれしい噂も聞く。次回こそは是非とも敵側とはフェアな戦いを期待したい。

ボン評価は…
☆ おもしろい ○まあまあ △つまらない ×クズ
の4段階評価です。
Posted by イリー・K at 00:17│Comments(4)
│【え】
この記事へのコメント
ボン桜板さま、こんばんは
戦争シーンは、その国の戦いの歴史が端的に反映されている場合が多いので、今回のエクスペンタブルズにしても、その例外に漏れないのではないでしょうか?
米国は、アメリカ独立革命以外の戦争は全て圧倒的物量で、一切の容赦なく敵を殲滅していますので、まず武器の性能において自国と並ぶ国力の敵をイメージできない。
だから、アメリカの敵と言えば
①やたら数が多い
②武器が貧弱
③死を恐れない
④残忍卑劣
でほぼ一括りできます。
これは、西部開拓時代のインディアン掃討作戦でもそうですし
日米戦争、ベトナム戦争の泥沼もそうですし、近年ではアフガニスタン・イラクも同じです。
日本の戦争映画だと、これがガラッと変わり、203高地などは、やたら火力で優勢なロシア軍に小銃一丁の日本兵が突撃を繰り返す凄惨な画になる。
勝ってる側なのにやたら悲惨です。
後、アメリカの戦争映画って、戦闘の済んだ戦場ってあんまり映しませんよね、屍がゴロゴロしている筈ですが、、、
この辺も総力戦で負けた記憶が無い国の一面を表しているように見受けられます。
戦争シーンは、その国の戦いの歴史が端的に反映されている場合が多いので、今回のエクスペンタブルズにしても、その例外に漏れないのではないでしょうか?
米国は、アメリカ独立革命以外の戦争は全て圧倒的物量で、一切の容赦なく敵を殲滅していますので、まず武器の性能において自国と並ぶ国力の敵をイメージできない。
だから、アメリカの敵と言えば
①やたら数が多い
②武器が貧弱
③死を恐れない
④残忍卑劣
でほぼ一括りできます。
これは、西部開拓時代のインディアン掃討作戦でもそうですし
日米戦争、ベトナム戦争の泥沼もそうですし、近年ではアフガニスタン・イラクも同じです。
日本の戦争映画だと、これがガラッと変わり、203高地などは、やたら火力で優勢なロシア軍に小銃一丁の日本兵が突撃を繰り返す凄惨な画になる。
勝ってる側なのにやたら悲惨です。
後、アメリカの戦争映画って、戦闘の済んだ戦場ってあんまり映しませんよね、屍がゴロゴロしている筈ですが、、、
この辺も総力戦で負けた記憶が無い国の一面を表しているように見受けられます。
Posted by 石原昌光 at 2011年02月07日 18:26
>石原昌光様
確かに歴史上の戦争映画には、プロパガンダではないけれども感情みたいなものが表れているとよく言われますが、『エクスペンダブルズ』に関しては全くの架空の国との戦闘の話しなんで、マンガですね。しかしアメリカ映画ほどわかりやすいものはないでしょう。映画が世界中に出回っているから目立ってるだけかもしれませんが。
『ランボー/最後の戦場』は実際にあるミャンマーが舞台ですが、その描き方は鬼畜の集まりみたいになってますから、まぁ、現実はどうあれ、それだけわかりやすくしてるんでしょう。
確かに歴史上の戦争映画には、プロパガンダではないけれども感情みたいなものが表れているとよく言われますが、『エクスペンダブルズ』に関しては全くの架空の国との戦闘の話しなんで、マンガですね。しかしアメリカ映画ほどわかりやすいものはないでしょう。映画が世界中に出回っているから目立ってるだけかもしれませんが。
『ランボー/最後の戦場』は実際にあるミャンマーが舞台ですが、その描き方は鬼畜の集まりみたいになってますから、まぁ、現実はどうあれ、それだけわかりやすくしてるんでしょう。
Posted by ボン桜板
at 2011年02月12日 00:06

往年のアクションスターが出ているので
「どんなもんか?」と思ったら
「こんなもんか…」ですね。
ボンさん独自のマイナー作品紹介は(前々回とか)
面白くて良いと思います。
今後もオリジナリティー全開でがんばって
ください。
「どんなもんか?」と思ったら
「こんなもんか…」ですね。
ボンさん独自のマイナー作品紹介は(前々回とか)
面白くて良いと思います。
今後もオリジナリティー全開でがんばって
ください。
Posted by TVAの残党 at 2011年02月22日 00:04
>TVAの残党様
大々的に宣伝打っといて「こんなもんか」でしたからね。
確かにあれだけ集めたのはスゴい事かもしれませんが、
ただ、「集めた」っていう事実ができただけでしたから。
次回作に期待ですね。もうダメかもしんないけどスタローンはホントに。
マイナーだけに限らずメジャーであろうが過去の名作だろうが、容赦なくもてあそぼうと企む所存でありますんで、よろしくどうぞ。
大々的に宣伝打っといて「こんなもんか」でしたからね。
確かにあれだけ集めたのはスゴい事かもしれませんが、
ただ、「集めた」っていう事実ができただけでしたから。
次回作に期待ですね。もうダメかもしんないけどスタローンはホントに。
マイナーだけに限らずメジャーであろうが過去の名作だろうが、容赦なくもてあそぼうと企む所存でありますんで、よろしくどうぞ。
Posted by ボン桜板
at 2011年02月25日 02:30
