2010年07月07日
【No.099】アウトレイジ

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’10/日本/カラー /109分
監督・脚本:北野武
出演:ビートたけし、椎名桔平、加瀬亮、三浦友和、國村隼、杉本哲太
12年前、ベネチア映画祭でのグランプリ受賞で日本国民にアッと言わせた『HANA-BI』から、私は北野映画はすべて劇場で観てきた。しかし何年か前に“ブランド力”にも翳りが見え始めたかなんてことを書き(『監督・ばんざい!』の項参照)、一昨年の『アキレスと亀』を観たあとは、もういいんじゃないかとある種の義務感を持って劇場に足を運んできた自分にイヤ気が差し始めていた。だから最新作『アウトレイジ』を観るかどうかは躊躇していた。でも、観ちゃった結局。ああ、ブランドには弱いんだなぁ何だかんだ言って。
しかし今回はそんな後ろめたさなど無用なくらい映画に入りやすかった。前作まで難解な部分が多かっただけに非常にわかりやすい。そして久々のオハコであるヤクザものである。
しかし原点に立ち返ったとはいえ、いまや劇場映画でまともにヤクザものをやっているのは見かけなくなった。盛んにやってるのはVシネだけである。あんなに百花繚乱な栄えっぷりを見ると見る気が失せる。というよりまともに見たことないんだ私は。どうしても「チャチい」という概念が頭から離れないもんで。演者がどんなに恐ろしい形相でスゴんでも「でもVシネ。」っていう脱力感に似た感慨が頭の中をよぎってしまう。いまじゃ100円まで値が下がって借りて見られるし。一方1600円払って観る劇場映画だという自負があるのかないのかは知らないが、さすが北野監督、ヤクザを演じることとは無縁な役者を配したり、殺し方に一工夫を加えたりと単なるヤクザものとは一線を画す作りになっている。Vシネつながりで中野英雄が出てたけど。
そして映画はVシネヤクザものとの差別化を成し遂げ、宣伝の煽り文句も手伝ってか「悪人博覧会」といわんばかりの赴きになっている。中間管理職ヤクザ、間抜けなヤクザ、インテリヤクザなどよりどりみどり。そういった面々がひとつの箱(スクリーン)の中に入り、雌雄を決すべくぶつかり合う。「ハブとマングースの決闘」にさそりやらカマキリやらザリガニなどを入れて俯瞰から我々観客が見物しているようだ。そんな動物(ヤクザ)たちの間で交わされる口ゲンカ、あんなに「バカヤロー」「コノヤロー」が連呼される映画なんて初めて見た。もっと他に脅し文句無かったのかというくらい。『BROTHER』の「ファッキンジャップぐらいわかるよバカヤロー」に匹敵する往年の名ゼリフ誕生の瞬間を待ち望んでいたのに「バカヤロー」「コノヤロー」ばかりじゃちょっと残念だ。
あと、この映画はヤクザものである以上、当然ついてくるバイオレンスが売りのひとつになっているのだが、血で血を洗う暴力が日常のヤクザ社会、そこで生きている彼らの価値基準というか言葉の解釈がすごい。國村準が下っ端のたけしと椎名桔平に敵対している組長の石橋連司(前出の“間抜けヤクザ”にあたる)をしめ上げる役目を押し付ける場面がある。嫌がるたけしに「チョッカイ出すぐらいでいいからさぁ」と國村。で、結局決行するのだが、あれが「チョッカイ出す」というレベルなのか。映画の中の話にしてもやっぱり堅気にはわからん世界ですわ。

ボン評価は…
☆ おもしろい ○まあまあ △つまらない ×クズ
の4段階評価です。
Posted by イリー・K at 04:03│Comments(0)
│【あ】