2010年02月24日
【No.093】アバター

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’09/アメリカ/カラー/162分
監督・脚本:ジェームズ・キャメロン
出演:サム・ワーシントン、シガーニー・ウィーバー、ゾーイ・サルダナ、スティーヴン・ラング、ミシェル・ロドリゲス
いま、映画界だけでなく、巷でも『アバター』という言葉を聞かない日はない。寝ても覚めてもアバター状態だ。
聞くところによると3Dといっても劇場の設備によって種類があるらしい。鑑賞時にかけるあのメガネも本格的なところ(何を持って“本格的”かはよく知らない)へ行けば“装着型”に近い形で視力が悪いメガネ族の方でも、そのままかけられる代物だが、いかんせんけっこうある重さのせいでよくズレて集中力を欠いてしまうとか。字幕版を観るにしても、今までの3Dの概念だった「飛び出てくる」ものではなく、さも画面の向こうにあるかのような「奥行きが味わえる」ものだが、字幕だけが飛び出して非常に読みづらいらしい。3Dを享受するためにはどんなに超満員であろうが我先に人波をかき分け苦行を受けなければならないのだろう。しかし、3D上映ではない2Dの字幕版を観た私も苦行を強いられた。隣りに座っていたガキんちょのおかげで。もううるせえのなんのって。どうせガキどもは3Dの吹き替え版に流れるだろうという私の読みは甘かった。見るからに小学校高学年の2人組が中央付近以外の席はガラ空きなのに、よりにもよって横にくっついてきやがって。どうか平穏に観られますようにと心の中で祈った願いもむなしく、我が家のように振る舞いまくる。上映中、喋ってはポリ袋からポップコーンを取り出してポリポリ食って、ポリ袋に戻してまた喋る。ガサガサ、ポリポリ、ペチャクチャの繰り返し。おまけに劇中小学生でもわかる英語が出てくると異常な反応を示すんだ。中盤、主人公が惑星の住人を従えて「我々は戦う!」と宣言したところでうれしそうに口をそろえて「ファイト!ファイトぉ〜っ!」だって。それを横目に映画後半からどうやってこいつらの暴走を阻止してやろうか、映画のことなど少しもなく頭の中にあるのはそれだけだった。エンディングを迎える前に何としてでも始末しなければ。飲んでいるアイスティーのカップをぶちまけてやるか、はたまたあらん限りの力を込めて拳骨をお見舞いしてやるか、いや小さい子供に暴力を振るうのは大人げないので、耳もとで「映画を観ているのは君たちだけではないのだよ。静かにしたまえ。」と囁き紳士的に処理するか。とまぁ逡巡したあげく、終盤あたりで遂にかましてやりましたよ。思い切り舌打ちを。もちろん効力ゼロ。ちゃんと耳に届くように横向いてやったのが情けない。ああ、もっと強くならねばなぁ。明かりが灯り、そそくさと帰っていく2人を見送りながら席を立ったのだった。
ここまで付き合ってもらった皆さんに申し訳ない愚痴を吐き出したのでガキどもはもういい。感想に移る。
映画が誕生してから百十年余り幾度と進化を遂げてきた。無声モノクロから始まり、トーキー(音付き)になり、カラーとなって、スクリーンサイズのシネスコ、シネラマの登場、急速なCGの発達などを経て、もうこれ以上はないだろうと思われていたところに現れた『アバター』の3D。果たしてこれが脈々と続いてきた進化のひとつの節目となるのか、いまのところ今後の映画業界の動向によるので未知数ではあるのだが、どうなんでしょうかこの3Dって。いっても昔、青と赤のメガネかけて大流行りして衰退してしまったわけだから、今のは詳しく言ったら改良版なわけだ。でも確かに昔のよりかは桁違いに臨場感はスゴいという評判は本当らしい。ただこの3Dの評判が、映画云々よりも一人歩きしている。友人と『アバター』を観たという話になってその次に「3Dじゃないけど」と付け加えると、とたんに友人は興味をなくす。内容のことなど二の次で3Dのことだけを知りたいのである。この映画に対する世間の受け止め方は本末転倒な気がして妙に気持ちが悪い。まぁ、こういう新しいモノの常ではあるんだけれども。
私は3Dなどどうでもよくて内容を観たかったから何の躊躇もなく2Dを選んだが、期待した割には結構な肩すかしだった。遠い昔にどっかで見たなというモノの寄せ集めな印象。デジャ・ウ゛かと思えるぐらい。
寡作だけど名作多いけどなぁ、ジェームズ・キャメロン。映像技術にも一切手抜かりがない完璧主義者だけど『タイタニック』から映像の完璧さと反比例するかのようにかげりが見え始めた感はあった。前回の『母なる証明』の項じゃないけどこの人も溺れてしまったんだなぁ、映像技術の追求に。映像技術と内容のバランスが保たれていた『エイリアン2』から『トゥルー・ライズ』あたりがピークだったように思う。「これからは3Dの映画しか作らない」と公言してるらしいし3Dの需要も高まるかもしれないが、少なくとも私には3Dはいらない。たとえ時代に逆行していると言われようとも。

ボン評価は…
☆ おもしろい ○まあまあ △つまらない ×クズ
の4段階評価です。
Posted by イリー・K at 23:00│Comments(4)
│【あ】
この記事へのコメント
初めまして。
…ではないですね
いつも就活関係の記事にコメントいただきありがとうございます。
私も某小冊子時々読んでましたよ。
『やさしい手』の批評も良かったです。
これからもちょくちょく遊びにきますね。○千代さん♪
…ではないですね

いつも就活関係の記事にコメントいただきありがとうございます。
私も某小冊子時々読んでましたよ。
『やさしい手』の批評も良かったです。
これからもちょくちょく遊びにきますね。○千代さん♪
Posted by ぽちゃりんこ at 2010年02月28日 23:13
ぽちゃりんこ様
初めまして・・・ではないですよ。
別名義でお世話(?)になっております。
こちらでは人格違いますが御贔屓ください。
それにしても『やさしい手』とは『やわらかい手』の間違いでは?
初めまして・・・ではないですよ。
別名義でお世話(?)になっております。
こちらでは人格違いますが御贔屓ください。
それにしても『やさしい手』とは『やわらかい手』の間違いでは?
Posted by ボン桜板【ぼん・さくらいた】
at 2010年03月01日 21:12

誰もが絶賛するアバターを「まあまあ」と言う
ボンさん。さすがです。
これからも旬の作品をメッタ斬りにしてください
ボンさん。さすがです。
これからも旬の作品をメッタ斬りにしてください
Posted by TVA at 2010年03月08日 01:44
TVA様
3Dだけでチヤホヤされてるばっかりに
「誰もが絶賛してる」と錯覚してらっしゃるのでは?
私と同意見の方、周りに結構いますよ。
3Dだけでチヤホヤされてるばっかりに
「誰もが絶賛してる」と錯覚してらっしゃるのでは?
私と同意見の方、周りに結構いますよ。
Posted by ボン桜板【ぼん・さくらいた】
at 2010年03月09日 01:34
