2006年10月26日
【No.008】あおげば尊し

●4月15日鑑賞
’05/日本/87分
監督:市川準
出演:テリー伊藤、薬師丸ひろ子、麻生美代子、加藤武
死は人生の一部であり、人類が誕生してからの永遠不滅のテーマである。…とまぁわかりもしないくせにこんな常套句を書いても死なんて普段は微塵も考えないわけである。
映画とは関係ないが、最近この死を扱ったテレビドキュメンタリーが多いように思われる。よくあるのが不治の病か何かで死期が近い人をその最期までカメラが追ったものだ。
仕事から帰った私に母は夕飯の支度を始め、一通りそれが済むと、テレビの前でビールを飲みながらその番組を観ていることがたまにある。同じところで食事する私にも当然それを観ることになるのであるが、どうだろうかこの状況。メシのど通るか?
内容の生々しさもさることながら、それを観ながらビールをあおる母の図を目にすると、何ともいえない不快感に襲われ、つい苦虫を噛みつぶしたような顔になってしまう。メニューがカレーライスだろうと豚肉のしょうが焼きだろうとイナムルチであろうとだ。
私は別にああいう番組は悪いと言っているのではない。全く意義のあることだし、取材を受け入れた当人の意志は尊重すべきだと思う。ただ私には度が過ぎるというか番組スタッフのあこぎな姿勢(視聴率獲得の為なら何でもするといった感じの)を感じてしまって素直に受け止められないのである。それプラス母が観てるあのありさまだもの。そら体にこたえるわ。
それに比べてこの『あおげば尊し』は同じ死を扱っていても、非常に淡々としている。さして面白いとはいえないが、これといった事件もなく、ただ、最後主人公の父が死を迎えるという一点だけに向かって静かに物語が進行していく。映画初主演のテリー伊藤もテレビで見るあのくどさは無く、そつなく役柄に徹していて映画になじんでいた。特に押しつけがましいところも無く、私には好感が持てた。あのエンディングまでは。
主人公の父は息子同様、小学校の教師だったが、厳格だったこともあり、最期まで彼の教え子たちが見舞いに来ることはなかった。主人公の同僚もその一人である。
そして問題のエンディング。父の出棺シーン。葬儀に出席しないとまで言っていたその同僚がひょっこり現れ「先生〜!」と叫び、他の教え子たちとともに「仰げば尊し」を合唱しそのままエンドロールへ。
う〜ん、…あざとい!
せっかくそれまでいい流れで淡々と進んできたのにそれで終わるとは。陸上のハードル走で順調にクリアして残りひとつが倍以上高かったためにコケた感じ。あそこが一番感動したというネットの投書をいくつか見たが私にはどうも劇的になったが故に浮いちゃったように見えて好きになれなかった。
ひねくれ者でごめんなさい。
まぁ、死を考えさせてくれるという意味ではこの作品ぐらいが私には丁度よかった。さっきのドキュメンタリーが劇薬だとすれば、こっちは清涼剤のようなものだ。
最後に、先週私はこのコーナーを週刊化以降も隔週で続けると宣言したが、また今週も載っていることに皆さんお気づきか。というのは、隔週の間に挟む新コーナー(ていうか単なる穴埋めコーナーです)が思いつかなかったんです。全くもって企画力ゼロのこの私。
従って毎週尻にムチ打ってこの連載を書かなければいけなくなる。おそらく多忙な時期には支離滅裂な原稿も書くかもしれない。
えぇい!もうこうなったらどう書こうと俺の勝手だ!誰にも文句はいわせねぇぞ!…と思わず自暴自棄になってしまう今日この頃である。

ボン評価は…
☆ おもしろい ○まあまあ △つまらない ×クズ
の4段階評価です。
Posted by イリー・K at 18:00│Comments(0)
│【あ】