2006年11月02日
【No.013】転がれ! たま子

●6月2日鑑賞
’05/日本/103分
監督:新藤風
出演:山田麻衣子、岸本加世子、竹中直人、ミッキー・カーチス、与座嘉秋、広田レオナ
この連載を長く続けていると(と言ってもまだ13回だけど)やはり読んでいる方はいらっしゃるようで、感想を添えたチケットの応募ハガキが時々来たりする。
先日本誌が行なったアンケートのハガキにも「このコーナーを楽しみにしています。」といったものが何通かあったみたいだし、評判も人づてではあるが上々だと聞いたりもする。(これは内輪だけの話)これは自画自賛でも何でもなく、ただうれしいんだか恥ずかしいんだか、この事実に対して素直に喜んでいいものか複雑な心境になっているというのが正直なところである。
そんな中、私の気持ちを更に複雑にしてくれる一通のハガキが届いた。
「ボン桜板さんの映画批評では『見たい!』と思う気持ちが湧きません。今日はネタバレもあったのでますます残念です。もっと興味を持てる内容の記事を期待します。」(那覇市・主婦・Gさん)
ゲッ、おこられてる。
いつかは来るぞと腹を括って待っていたこういうハガキも、いざ来るとなるとやっぱりけっこうヘコむものだな。
たしかにGさんのご指摘は当たっている。振り返れば感想が中途半端なまま終わったり、よく本筋から話が脱線したりと、映画批評とは名ばかりな内容ばかりだ。と言いながら今日もまた原稿が3分の1まで来てるのにまだ本題に入ってないし…。
ここではっきり断わっておくがGさんがおっしゃたような映画評を期待されては困る。隣の頁に映画情報が載っているのでそう見えるかもしれないがこの頁はいわゆる映画鑑賞の手引き的なものとは全く違う。取り上げた作品は公開がとっくに終わっているものがほとんどだし、基本コンセプトとしてはただ観た映画を好き勝手に書くというだけ(コンセプトというほどのものでもないけど)。だから言いたいことがあれば何だって書くし、ネタバレもやむを得ない場合もある。もし真っ当な映画評を読みたいんであれば、ほかの雑誌に山ほどあるからそっちを読みなさい。キネマ旬報とかさ。
さてここからがようやく本題です。
日本映画界の重鎮のひとりに新藤兼人という監督がいる。戦前から映画撮影所の雑用係としてスタートし、社会派から喜劇まで幅広いジャンルの映画を数多く撮り続け、御年94歳になった今でも現役でありつづける巨匠である。その実孫にあたる新藤風の二作目にあたる映画がこの『転がれ!たま子』だ。
日本映画史に残る巨匠の孫が監督をしていると知り、どれどれお手並み拝見ということで観に行ったら、大物の子孫は一生大物を越えられないというジンクスは当たっているのか、(まぁ、2作目で越えられるとはほぼあり得ないんだけど)何ともしんどい作品だった。
行動範囲が狭い中(それも500メートル)で暮らし、用心深い性格から鉄かぶとを常にかぶっている24歳の主人公たま子が自立に向けて孤軍奮闘するというコメディだが、まずそんな女いないだろうと開始10分で拒絶反応を起こしてしまい残りの90分、ずーっと眉間にシワが寄りっぱなしであった。
本作の重要な場面としてたま子が500メートルの行動範囲から飛び出していくというのがあるが、そのきっかけが好物の甘食のお店が休業したのでほかに店はないか探しに行くんだと。
原爆や家庭内暴力、老いなどをテーマとして扱い、重厚な作品を放ってきた祖父の孫が映画を撮るとなるとこんなにも軽くなるものか。祖父がこれを観たらひっくりかえるだろう。タイトルも『転がれ!たま子』なんて脱力感たっぷりだし。もうこのまんま転がっていけよ奈落の底まで。

ボン評価は…
☆ おもしろい ○まあまあ △つまらない ×クズ
の4段階評価です。
Posted by イリー・K at 09:00│Comments(3)
│【こ】
この記事へのコメント
>ほかの雑誌に山ほどあるからそっちを読みなさい。
ボンさん、強気ですね・笑
私は、ボンさんの観た映画の感想を読んで
へぇーって感心して読んでるだけです。
観た映画はまだ一本もありません。って書くとへこみますか?
へこまないですよね? 間違った読みではないですよね?笑
ビデオ屋さんでレンタル専門なので、ビデオ、DVDが出ていないのは観ません。
また邦画もあまり観ません。
でもカモメ食堂は観たいと思いました。
昨日、一昨日は、グフィネスパルトロー&ジュードロウの〔スカイキャプテン・ワールドオブトゥモロー〕(だったかな)を二日かけて観ました。
お客さん増えるといいですね!笑
ではでは失礼しました。
Posted by △公園 at 2006年11月02日 13:22
追伸
ここに遊びにきてくれるお客さんが増えるといいですね。
Posted by △公園 at 2006年11月02日 13:32
△公園さま
あんな駄文で感心していただけるとは…
感無量です。
これなら死んだおじいちゃんも喜ぶというものです。
Posted by ボン桜板 at 2006年11月02日 13:59