2006年11月10日
【No.016】立喰師列伝

●6月10日鑑賞
’06/日本/104分/カラー
原作・脚本・監督:押井守
声の出演:山寺宏一、兵藤まこ、榊原良子
その人物を初めて見たのは数年前、NHKの「トップランナー」という番組を見た時だった。毎回1人のゲストを招いてその人のアレコレを聞いていくというこの番組。その顔ぶれは俳優やアーティスト、作家などといった華々しい人ばかり。だがそれまでの面子をすべて吹き飛ばすかのようにその日のゲストだったその人は“小汚い”の一言に尽きる風体だった。
ボサボサの薄い髪型で襟足が伸びており、テレビに映ることを全く意識していないラフな格好でソファに座っている画が目に入り、ザッピングしている私のリモコンの手が止まった。話を聞くとアニメ監督らしく、週に映画を何十本観倒して、どれも映画じゃないと独自の映画論を展開し、その他小難しい話を云々かんぬんとのたまっていた。
時が経って、ある雑誌に『攻殻機動隊』というアニメ映画が、アメリカのセルビデオセールスのトップ1に輝いたという話題が載っており、そこに記されていた監督名とあの時NHKで見た小汚いオッサンが一致した。それが押井守であった。
てな感じで冒頭から私と押井守の出会いを書いたが、実のところ私はこの人の作品を一度も観たことがない。いや、正確には一本チラ見したといった方が正しいかもしれない。
おととしぐらいに、01年制作の『アヴァロン』という実写作品がCSチャンネルでやっていた。全編ポーランドロケでおまけにスタッフ、キャストもほぼポーランド人という異色作。そして映像もこれまた異色で、全編セピア調の画面で戦場が舞台なのであるが、銃なんかで人が撃たれると一昔前のテレビゲームみたく粉々に散らばっていくのである。あまりの異様な雰囲気に開始五分で私はチャンネルを変えた。かと思えば『イノセンス』のようなれっきとしたアニメ作品も作ったりしている。
異色タイプとスタンダードタイプ。独自の世界観を両方の表現方法で併せ持つ前衛的な監督として私の中で定着した。
そして今回の『立喰師列伝』は異色タイプに属する作品である。
一応これはアニメーションに位置づけられているが、映像はアニメとは似て非なるもので、どううまく説明したらいいかわからないので考えてみる。
(しばし熟考)
……やっぱりわからない。
ということで定価1,000円と、ちょい高めのパンフレットを購入し、紹介文から引用する。
「静止画写真を撮影し、それをコンピュータに取り込み、パタパタアニメのように動かしていく。」これは?スーパーライヴメーション?と名付けられた新しい映像技法らしい。これでどんなものかおわかりいただけただろうか。それでもわからないという方はDVDが出たら観てください。結局説明が粗くなり申し訳ない。
内容はというと立喰師(あの手この手で食い逃げを行うプロ)たちの陰の活躍(フィクション)を戦後の昭和史(ノンフィクション)に絡めて紹介するドキュメンタリー趣向の作りになっている。
ただし「奇抜な映像で食い逃げのプロなんておもしろそう」なんていう軽いノリでこの映画にナメてかかってはいけない。
本作ではこれ以上ないほどの堅苦しいナレーションが延々流れるのであるが、そのセリフが聞き慣れない単語の羅列でついて行けなくなる者が続出するだろう。私は開始20分で脱落した。それに前出のあの映像が104分続くので観終わったあとグッタリすること請負いだ。
確かに切り口としては面白いし、誰もやらなかった事を実行しようとする実験精神は買うが、いかんせん思想的なものが突っ走り過ぎてあまり私の肌に合わなくなってしまった、そんな作品であった。

ボン評価は…
☆ おもしろい ○まあまあ △つまらない ×クズ
の4段階評価です。
Posted by イリー・K at 12:19│Comments(0)
│【た】
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何を隠そう、私は押井作品が好きだ。
大好きかもぉ♪(^^)
この作品、映画館で観たかったけど
仕事か何かで重なって観にいけなかったのよね。
DVDで鑑賞。
立喰師。
それは飲食店に...
立喰師列伝【映画、言いたい放題!】at 2007年02月13日 02:45