2006年11月13日
【No.019】ナイスの森

●7月8日鑑賞
’05/日本/150分/ ビスタ/ドルビーSRD
監督:石井克人、三木俊一郎、A N I K I
出演:寺島進、浅野忠信、池脇千鶴、吹石一恵
白い卵型をした小さな宇宙船の中で漫才コンビ「ホクロ兄弟」の意味不明なネタをモニター越しで鑑賞しているパイロット。そして宇宙船は発進。これが今日紹介する『ナイスの森』のオープニングシーンである。
大概、映画のポスターなりチラシというのは、見る側にその作品の内容や、大まかなストーリーのさわり的なものを伝える役目を果たすものであるが、本作のポスターにはそういった役目を一切放棄するかのように全く内容がつかめなかった。映画に登場する大勢の出演陣が全員写っており、下には「ナイスな人たちが大集合!この春一番の映画祭り!」というコピーが載っている。「ナイスな人たち」と思われるこの出演陣が1本の映画の中でどうストーリーに絡んでいくのか。いわゆる群像劇の類だろうと解釈して観たら前出の出だしにホクロ兄弟のギャグ(らしい)がとてつもなくつまらなく、早くもこれは(評価が)「クズ」決定かと思いしばらく観てたら、「GUITAR BROTHER」の文字が。
ここで私が未見の段階で解釈していた群像劇という読みは見事に外れた。この映画は5〜10分程度のショートストーリーをオムニバス形式で綴った作りになっており、ポスターに写っている登場人物はそれぞれつながりはあるものの、各々別個のストーリーに登場する。たとえばさっきの「GUITAR BROTHER」では、登場するモテない三兄弟(↓イラストの3人)のうちのひとり、三男・マサオのみてくれが金髪に青い目とどう見てもバタ臭い。次男・マサルは日夜練習しているギターを、布団を被って横になってる弟のマサオに弾いて聴かせるが、一曲弾き終わったあとマサオはボソッとひと言、日本人とは思えないイントネーションでこう吐き捨てた。「ソンナノワカラナイヨボク(そんなの、わからないよ僕)」。これに私は思わず吹き出してしまった。そのあと三男に何を言っても延々このセリフを繰り返すのである。これは本作におけるいわばつかみといっていいかもしれない。監督はこれを果たす大役をこの三男に託したわけだ。やるなぁ、マサオ。
以後もこういったナンセンスかつ下らないショートストーリーが続く。これを観ながら私も久々に劇場で声を出して笑わせてもらった。しかし評価は「クズ」。
なぜ芯から笑ってそれなりに楽しんだにもかかわらず最低評価を下したのか。内容は確かにおもしろい。ただ観終わった後、どうしても取り除けないしこりがひとつ。それは「コレって映画か?」ということ。じゃあ映画とはなんぞやと定義を求められても一概には言い切れないが、やってる事が何となく「テレビ的」なのだ。先程ショートストーリーと紹介したがそれというよりこれらは限りなくコントに近く、「GUITAR BROTHER」の一編にしてもマサオの存在は、「ガキの使いやあらへんで!!」の今夜が山田や板尾の嫁に通じるものがある。なのにこの映画には芸人は一人も出ていない。第一線で活躍する俳優らがこんなコントまがいな事を演じているのが本作の最大の魅力ではないだろうか。物静かなイメージのあった池脇千鶴に早口で喋らせたり、加瀬亮を踊らせたりしているのを見てると楽しいし、特に能面の顔まねをしながら舞を舞う寺島進は必見だ。今までいろんな映画で彼を見てきたがこんなにいい寺島進に出会えたのは初めてだった。
とにかくこの作品、映画として観るのは甚だ疑問だがテレビで観るには充分な逸品であろう。深夜にコレを流したら、結構いい数字(視聴率)取れるかも。

ボン評価は…
☆ おもしろい ○まあまあ △つまらない ×クズ
の4段階評価です。
Posted by イリー・K at 12:00
│【な】