2006年11月18日
【No.024】ローズ・イン・タイドランド

●9月2日鑑賞
’05/イギリス、カナダ/カラー/117分
監督:テリー・ギリアム
出演:ジョデル・フェルランド、ジェフ・プリッジズ、ジェニファー・テイリー
さて、今日の映画は『ローズ・イン・タイドランド』。監督は『未来世紀ブラジル』などの初期作品からすでに独自の映像世界を確立し、かのイギリスのコメディー番組「モンティ・パイソン」の一員でもあったテリー・ギリアムである。
いま「モンティ・パイソン」の名を出してはみたものの、正直私には年代的なズレがあるせいか、あまりピンとこない。しかしこの番組、リアルタイムで見ていたという人にはかなり熱狂的な、ある種信者に近いファンが世界中にいるといわれるほどの伝説的な番組である。実は私はこの番組の映画版『モンティ・パイソン・アンドナウ』のビデオを一度観たことがある。といっても観た理由は前述の評判に踊らされたわけではなく、日本語版の広川太一郎の吹き替えがすこぶる面白いというのを聞いて観たのだ(どこでその評判を聞いたかは今となっては憶えていない。)。
中身はさすが伝説化したコメディ番組といわれるだけあって、単なる笑いだけに終始しないきわめて濃い内容であった。風刺を込めて共産主義を皮肉って見せたりといった知的な要素も含まれてる分、重みがある笑いといった印象だった。それよりもなによりも強烈だったのは広川の吹き替えだ。「カミさんいるのぉ〜?ボクいないのぉ〜。」「いやったらしいんだからこのスケベェが〜!!」「オニヤンマのハナクソ!」といったその場のシチュエーションには関係ないいわゆる「広川節」とよばれるセリフを吹き込み、不協和音寸前まで押さえる独特のセリフ回しは?重みがある笑い?をはるかに凌駕し、私を虜にした。マイケル・ホイの声を担当した香港映画『Mr.BOO!』でもこれと同様の効果を上げている。テリー・ギリアムがいつの間にか広川太一郎の話になってしまった。またいつもの「逸らし癖」が出たところで本題へ戻そう。
不幸な家庭環境で生まれ育った少女ローズ。彼女は母の突然の死を機に、父と今は亡き祖母の家に住むことになる。辿り着いた先は金色の草原にポツンと一軒の古い家が建っているという見知らぬ土地。目的地に着くや否や、父も「旅に出た」まま帰らぬ人となり、一人取り残されたローズは持ち前の想像力でこの悲惨な状況を乗り越えていく。ってな話である。
どのような状況に置かれても、生き抜く力を与えてくれる子供が持つ想像力のたくましさを描いた本作の主人公・ローズだが、この子、ほんとにたくましいんだ。ビックリしましたよオジサンは。
遊び道具(彼女にとっては想像上の友達)がバービー人形の頭というのが泣けてくる。経済上の理由でそうなったのなら涙モノだが、もし、頭だけ残して胴体を捨てたのなら、かなり奇天烈な子になってしまうが。ま、これは私の想像の話ですけど。
あと現在のアメリカ社会を語る上で「麻薬」は欠かすことの出来ないキーワードである。最近では犯罪映画でもないのに、何も前触れもなしにクスリを楽しむシーンが登場したりするが、テリー・ギリアムという人はこの「麻薬」をやたら使いたがる監督らしい(この見解は本作とヤク中作家を描いた『ラスベガスをやっつけろ!』を以前観た印象から。)。ローズの両親が急死する原因も麻薬で、あたかも生活の一部のように常用していた。これを観ていかに麻薬がアメリカの家庭環境にまで根付いているかを改めて考えさせられた。なんか今回は当たり障りのない普通の感想になっちゃいましたね。とどのつまりこの作品はギリアム独特の映像世界に引き込まれるだけで、あとは何も残らない作品だったと言いたかったのです。
あまりのていたらくぶりになってしまったことを今日は皆さんにご勘弁いただきたい。

ボン評価は…
☆ おもしろい ○まあまあ △つまらない ×クズ
の4段階評価です。
Posted by イリー・K at 12:00│Comments(0)
│【ろ】