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2006年12月09日

【No.033】セレブの種

【No.033】セレブの種
●11月11日鑑賞
’04/アメリカ/カラー/140分 
監督:スパイク・リー 
出演:アンソニー・マッキー、ケリー・ワシントン、エレン・バーキン、モニカ・ベルッチ


 私がこのコラムを書くのは週末の土日で、書く場所は自宅ではなく必ず外と決めている。したがってファーストフード店やら、ファミレスやら、喫茶店やらと転々としているが、どこも週末とあって家族連れやカップルで賑わっており、落ちついて書くことができない。

そこで静かで落ちつける場所はないかといろんな人に尋ねてみたが、なかなか見つけられず、結局ここ最近は某ファーストフード店に落ちついている。もし、あなたが週末どこかのファーストフード店へ行って、そこで机に広げた原稿用紙をじっと見つめている男を見かけたら、それは間違いなく私である。チラ見してもいいけど、そっとしておいてね。で、そんな私と同様、連れがいないたったひとりの客をチラホラ見かけるが、中には一見「異様な客」にお目にかかったりする。深夜1時ごろ、錆びついた自転車でやって来て何を注文するかと思ったら、クラムチャウダー一品だけを取って、ジュルジュルと音を立ててすすり、そのまま去って行った作業服姿のジイさん。セットで取ればいいものを一品だけ取って完食する度に別の一品を追加注文していたバアさん。店内でウーウーと何やら音がするのでBGMかと思ったら、横で唸りながらあぐらをかいてハンバーガーにパクついていたオバさん。そんな人たちが間近にいると、気になってオチオチ書くことができない。仕方なく執筆作業を放棄して観察に徹する日もあった。

 こうして原稿を書いてるあいだに今日も「異様な客」は出没した。

 その人は出で立ちといい、行動といい、もはや「異様」を通り越して「謎」の領域に達していた。唯一わかるのは男性であるという事くらい。どっかのマークの刺繍が入ったキャップを目深に被り、コットンのグレーの長袖シャツに妙に裾の短いジーンズに黒いエナメルの靴という全体的に不釣り合いなルックスのその男性は私の左隣りにある角の一人席に座り、手に持っていたやたらポケットがいっぱいついた茶色の鞄を向かいの席に置いて店内に設置してある新聞を片っ端から一紙ずつ取ってきて読んでは返し、読んでは返しを繰り返している。しかも顔を隠すように新聞を持って広げて記事を隅から隅まで読んでおり、注文したアイスコーヒーは一滴も口にせず机に放置してある。下手したら新聞だけに飽き足らず、雑誌にも手ぇ出すんじゃねえだろうなぁ。「MORE」とか読んでたりして。

 あ、いつまでもこの人に気取られてる場合ではない。紙数が残り少なくなってしまったところで作品の紹介です。

 今週は社会派監督として知られるスパイク・リーの『セレブの種』である。前に公開された『インサイド・マン』が私が初めて観たスパイク・リー作品だったのだが、これがめっぽう面白く、今回も期待して観に行ったのだが、本作は前作と違って娯楽性よりも社会描写に重きを置き、今世界中で話題になっているらしい「生殖ビジネス」なるものをテーマにした過激な内容に仕上がっている。「生殖ビジネス」といっても最先端の技術を用い、精子や卵子の売買などを頼って子供を誕生させるのを想像するが、本作はいたって原始的。優秀な遺伝子を持っているのを買われ、高額な報奨金と引き換えに種馬となった主人公が、子供が欲しい女性とナニをするといったもの。18禁(成人指定)になるのも納得である。2時間20分に渡ってこのビジネスが社会にもたらす影響、本来の愛のかたち、それらによって導かれる主人公の運命などいろいろ描かれているのに、私がいちばん目を引いたのは種付けされるシーンであらわになる相手女性たちの変わった性癖だけだった。根っからの助平であるが故に釘付けになった私は情けない事この上なかった。


【No.033】セレブの種
ボン評価は…
☆ おもしろい ○まあまあ △つまらない ×クズ
の4段階評価です。



Posted by イリー・K at 12:00│Comments(0)【せ】
 
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