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2007年01月20日

【No.038】日本以外全部沈没

【No.038】日本以外全部沈没

● 12月11日鑑賞
’06/日本/カラー/98分 
監督:河崎実 
出演:小橋賢児、柏原収史、松尾政寿、村野武範、藤岡弘、


 これほどけなし甲斐がある作品はないだろう。『日本以外全部沈没』は。
説明するまでもないがタイトルからお察しのとおり、小松左京原作で映画にもなった『日本沈没』を筒井康隆がパロディとして発表した短編小説を映画化したものである。監督は数々の珍作を世に贈り出している河崎実。『いかレスラー』、『コアラ課長』、『かにゴールキーパー』その他多数と彼のフィルモグラフィーを眺めれば、己の「けなし心」が奮い立つというものであろう。

 それで本編を観たら案の定、期待を裏切らない酷さであった。もう気持ちがいい程の酷さ加減で物語が進行していく。

 タイトル通り日本以外の諸外国が次々沈んでいき、各地から難民となった外国人たちが日本に集まり、やがて日本国内で外国人たちに対し排他的な気運が高まっていくという内容から、痛烈な社風風刺を匂わすような喧伝をうっといて、いざ観てみたら単なる思いつきで作ったようなエピソードの羅列ばかり。さすがに社会情勢には疎い私でも「そりゃないんじゃないの」とツっこみたくなるところがいくつかあった。「北方領土、竹島、尖閣諸島はどうなるのか!?」などと大きく出たキャッチにのせられて、劇中で全然触れてねぇじゃねぇかと、大いに肩すかしを喰らった観客及び、評論家の声も続々とある。

 しかし私はそんな術中に陥った方々に声を大にして言いたい。「そもそもこんなモノに期待する方が間違っている」と。

 通常このコーナーは映画を観た後に4つのいずれかの評価を下す段取りになっているが今回の場合、観る前に、いや本作の存在を初めて知った時から評価は「クズ」と決めていた。ここで取り上げる遙か前から即決である。そういう宿命を背負った映画を私は「クズ映画」と名づけたい。そして本作を撮った河崎実という映画監督は私にとっては「クズ映画」を世に提唱していると思えてならない。まだ他の作品を観た事がないので一概には言い切れないが。

 私が今日名づけた「クズ映画」の定義を一連の河崎実作品(といっても本作だけだけど)になぞらえて考えてみるに、まずはその「くだらなさ」。くだらなけりゃなんでもOKという意気込み。タイトルだけでもくだらなさがほとばしっている。そして「安さ」。出演者からセット、小道具に至るまでどこか安い。興行的なリスクを極力抑えたリーズナブルな制作方法といえる。それに「作品のスケールの小ささ」。これは特にロケ地に顕著に表れている。あれは全部近場で撮ってるにちがいない。おそらくロケ隊は東京都内から出たことはないだろう。余計な心配だが、ちゃんと撮影許可は取っているのだろうか。最後はこれがなければ先の3つは決して遂行できない「開きなおり」である。「イカがレスラーになってなぜ悪い。」「コアラが課長なんておもしれぇじゃねぇか。」「批判を受けるのはこっちだって百も承知。喧嘩上等。」こういった開きなおり精神が数々の珍作を生んできた原動力かもしれない。そしてこれらの定義は他の作品にも一貫しているだろう。観てない私はそう信じたい。

 これから河崎監督には「クズ映画」の王道に向けて邁進して欲しいものである。が、その前に輝かしい第一歩を踏みしめていた偉大なる先兵がいた。水野晴郎。批評家、観客双方から総スカンを喰らった『シベリア超特急』から今や数多いマニアを獲得し、シリーズ化するまでに至った功積があるではないか。河崎監督よ、晴郎に続け!晴郎に続いて突き進んで行け!応援はしないけど。


【No.038】日本以外全部沈没
ボン評価は…
☆ おもしろい ○まあまあ △つまらない ×クズ
の4段階評価です。



Posted by イリー・K at 12:00│Comments(0)【に】
 
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