2007年06月09日
【No.052】酒井家のしあわせ

●3月17日鑑賞
’06/日本/カラー/102分
監督:呉美保
出演:森田直幸、ユースケ・サンタマリア、友近
音楽:山崎まさよし
「田村正和14年ぶりのスクリーン復活」。6月公開の映画『ラストラブ』の謳い文句である。今やすっかりテレビドラマの顔である彼が『子連れ狼〜その小さき手に』以来銀幕でどのように魅せてくれるのかと持ち切りらしい。実際の巷での話なのかマスコミがただ煽り立てているだけなのかわからないが。
しかしどうなんでしょう。このタイトルから滲み出るしょっぱさもさることながら、私の中でどうしても拭いきれない恋愛映画で主演をはる「この期に及んで」感は。
栄枯盛衰渦巻く芸能界。20年以上に渡って民放テレビ局の連続ドラマ(ゴールデンタイム、2時間ドラマは除く)で主役を演じ続けているのは彼を置いて他にはいない。そして数々の恋愛ドラマでニヒルな魅力をいかんなく発揮し、熟年二枚目俳優の座に君臨しているのは周知の事実である。
しかし彼も63歳。けっこうなジイさんである。それに確実に容姿が衰えてきている。テレビドラマを見る習慣を持たない私は彼のドラマだけはその衰えぶりを観察するため、1〜2年のうちの3ヶ月間は欠かさずチェックするが、トレードマークの眉間のシワは年を追うごとに深くなり、特徴のあるヘアスタイルにもだんだん白髪が増え始めている。それに近年は父親役のホームドラマが多く、恋愛モノから遠ざかっていた。そこへきてこの『ラストラブ』。妻を亡くし、自らも死期が近いことを知った男田村が、30以上も年が離れた女性と恋におちるという散々テレビでやってきたようなことを映画に持ち込む意図がどこにあるのか。
出演交渉時、「熟年世代へのエールにしたい」というプロデューサーの説得に田村が応じたとのことだが、田村正和だよ。阪東妻三郎の息子だよ。あんな63歳そこらへんにいないだろう。年下のうちの父は七三分けのでぶちんの痛風持ちだぞ。さっき衰えてきたなんてことを書いたが、相対的に見ればうちの父なんかより格段に若い。その相手役に伊東美咲で舞台がニューヨーク&横浜とくれば、これはもうほとんど絵空事だろう。
私は作品の出来、不出来や、ヒットするかしないかなんてのはどちらでもいい。ただコレを観て、調子に乗った中年オヤジが現れないことを祈るのみである。
マサカズ映画にうつつを抜かしちまってすっかり本題に入るのを忘れていた。今日の作品は『酒井家のしあわせ』。
友近とユースケ・サンタマリア。バラエティ番組ではすっかりなじみ深い顔となった2人を夫婦役に据えた一家族にふりかかる一家離散の危機を描いたホームドラマだ。「危機」なんていう言い方をしたが、映画を観ると「危機」が当てはまるほどの重さはない。思春期を迎えた息子との衝突や帰省先の妻の実家で浮かび上がる夫が持つ「家族」の概念のズレなどいろいろあるが、なんせあの2人が演じるもんだからむしろ軽い趣きがある。これが松本幸四郎と市原悦子だったら全くの別モノになってしまう。
そして一家離散を招くことになる夫の一言「好きな男ができたから」。女ならありきたりの蒸発になってしまうという了見なのか、ものスゴい変化球である。かと言ってその後の話はヘンな方向へ走ったりしないし、監督が女性だからか?ホモ?から醸し出されるおかしみやほろ苦いエグさといったものが浄化されサラリとしている。
ちょっとした笑いも随所にちりばめながら演者や監督の腕でライトで不思議な味わいに仕立てたこの作品。加えてあまりにハマりすぎてる友近の母(妻)役は必見だ。
ちなみにユースケ演じる夫の役名は「正和」だった。前置きとの偶然のつながりにちょっとびっくり。

ボン評価は…
☆ おもしろい ○まあまあ △つまらない ×クズ
の4段階評価です。
Posted by イリー・K at 12:00│Comments(0)
│【さ】