2007年08月04日
【No.056】ブラックブック

● 4月14日鑑賞
’06/オランダ・ドイツ・イギリス・ベルギー合作/カラー/144分
監督:ポール・バーホーベン
出演:カリス・ファン・ハウンテン、トム・ホフマン
さぁ、今日の作品はポール・バーホーベン監督の『ブラック・ブック』だ!
ただの勢いにまかせて叫んでみたが、この映画はとっくに公開が終了している。しかも3ヶ月前。そしてこの先いつDVD化されるかわからない。ということは今から書くのは全く何の役にも立たない映画評になるわけだ。
ま、「役に立たない」のが本コーナーの一コンセプトであるわけだが、とにもかくにもこの映画、この原稿を掲載している今号の発行時点では観る機会を得られないことが残念なほど、大変面白い内容に仕上がっている。何せ監督がバーホーベンだから。
バーホーベンといえば『ロボコップ』『トータルリコール』『氷の微笑』『インビジブル』といったハリウッド映画でアクション漬けのバカガキから、さかりがついたエロガキ(私もその1人でした)まで虜にした監督である(決して幼稚だとか低俗というのではありません)。そんな彼が原点に帰り、出身地オランダへ戻って製作されたのがこの『ブラックブック』である。
第二次世界大戦末期。家族をナチスに殺されたユダヤ人女性がレジスタンスのスパイとなって復讐を誓うというサスペンス。
多くは観たことはないが、大抵この時代を背景にしたヨーロッパ映画というと『戦場のピアニスト』にしても『コルチャック先生』にしても、どうしても重く、メッセージ色が強いものになってしまう。ヨーロッパが被った20世紀最大の負の歴史であるから感傷的にならざるを得ない。そんな中でこれほどエンタティンメントに徹した映画は稀ではないだろうか。
映画を通して歴史に目を向けるというのはもちろん映画のひとつの大きな役目であるが、歴史を下地にして娯楽として仕立て上げ、観客を楽しませるのも歴史認識を刷り込ませるという意味では大変意義あることだと思う。でもこの映画を前にして歴史認識というのが若干かすんでしまうくらい娯楽色が強いのは否めないが。
でもそれは仕方ない事だとは思う。先に挙げた一連の作品でヒットを飛ばし続けたハリウッドという所は何でも映画にしてしまう総本山だから。あの9・11から5年経って、早くもインチキくさいヒューマン映画を作っちゃうんだからそのしたたかさには舌を巻く。第二次大戦にしたって『インディー・ジョーンズ』に見られる全く架空な話に歴史上実在したもの(ナチスドイツ)を挿入したりしている。今の引用は突飛で無理矢理な例だが、ヨーロッパと違って全世界を公開視野に入れて映画を作っているのだから、当てるためならどんな手段でもいとわない。それがハリウッド。
そんなハリウッドの中で培われてきたバーホーベンの手腕は故国オランダでも十二分に発揮されている。
オランダの街頭で繰り広げられる銃撃戦。ストーリーが進行していくうちに浮かび上がる?裏切り者?を探す謎解きとどんでん返し。あと忘れちゃいけないお色気と胸躍るシーンの連続で見どころいっぱい。こうして延々手放しに褒めてると、読み返してみたら何だかウソっぽいなぁ。
なのでどこかアラがあったとは思うが、頭の中で探ってみたら記憶がない。もう3ヶ月前に観たものだからね。統括的にみて「面白かった」という印象が記憶にあったアラをいつの間にかかき消してしまったようだ。まさに「派手にやったもん勝ち」というところだろう。
芸術的趣向が強いヨーロッパ映画の中で、ひときわ特異な輝きを放つこの映画。どこかの映画評論家じゃないが、DVDが出たら騙されたと思って観て下さい!

ボン評価は…
☆ おもしろい ○まあまあ △つまらない ×クズ
の4段階評価です。
Posted by イリー・K at 12:00│Comments(2)
│【ふ】
この記事へのコメント
久しぶりの「おもしろい」がでましたね。
よほど面白かったのか、
配給業者から「袖の下」的なものを貰っての発言なのかは
観て判断したいと思います。
台風の圧力と上司からの圧力に負けずがんばってください。
Posted by Picnic at 2007年08月04日 22:31
Picnic様
毎度コメントありがとうございます。
わたしは配給会社のしがらみ等で評価などはしておりません。ただただ、自分の感性に忠実に書いているだけです。でもそれだけに問題なところは多々ありますが・・・。
Posted by Dreach at 2007年08月06日 15:43