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2007年08月18日

【No.057】ユメ十夜

【No.057】ユメ十夜

● 8月3日鑑賞
’07/日本/カラー・モノクロ/110分
監督:実相寺昭雄、市川崑、清水崇、清水厚、豊島圭介、他
出演:小泉今日子、松尾スズキ、うじきつよし、中村梅之助[4代目]




 このコラムを続けて一年半経とうとしているが、ここで白状する。

 私は活字が苦手だ。

 書くのは時々ここで書けないと愚痴をこぼしているので、おつきあいいただいている読者には察しがつくと思うが、読むのもこれ然り。興味本位で買った本は即本棚へ直行なんていうのはザラである。

 読むにしても書くにしてもどうも肩に力が入ってしまう。これがいけない。文章を通して表現される物語や論旨などが頭に入る前に読むことに集中しすぎて、下手したら一行の文章を何度も熟読していたりする。おかげで一冊の本を読み切るのに相当時間がかかる。いつからこうなってしまったのか。特定はできないが、それはどうも小学生時分によく書かされた読書感想文にあるような気がする。本を読んでその感想を文章にして書く。まさに二重苦だ。散々頭を悩ませたあげく、書き上がった二枚の作文用紙には、本の内容をただただなぞっただけの駄文が出来上がるという有り様だった。想像力が乏しいといってしまえばそれまでだが。それがいまやこうしてコラムを書き続けているんだから、運命というのは皮肉なものである。

 そんな活字離れが酷い私にとって原作がある映画というのは、その原作が持つ世界観をつかみやすいので(もちろん映像化する監督によって差はあるが)大変助かる。映画から入って原作本を読むのもひとつの楽しみ方だろう。今日紹介する『ユメ十夜』は原作モノの映画だ。しかも原作者は、かの文豪夏目漱石(そういえば私の未読コレクションの中には「三四郎」がある)。

 短編小説「夢十夜」を十話に分けたオムニバス形式で各10分に割り当て、若手・中堅から市川崑なんていう大巨匠まで10人の監督たちが各話を担当した何とも欲張りな作品。しかし「あんまり欲張り過ぎると、あとでイタい目に遭う」という言葉が浮かぶほど、実が伴わないものであった。

 各監督とも独自の解釈で映像化しているが、どうも不完全燃焼で終わっている。原作を読んでいないので何とも言えないが、ひとつの映像作品として見ると、きちんと筋を立てていない感じである。原作を10分という制限時間でまとめ上げるのはけっこうなリスクかもしれない。

 その中で比較的まとまっていて、まともに観られたのは第九夜と第十夜。それまで主観的なつくりに頭をかしげてばかりいたが、この2つを観て頭の中のもやが一気に取れた。

 第九夜の監督は『ゆれる』の西川美和。以前コラムで取り上げた通り「驚異の女性監督」の印象が強かったが、かなり好感が持てた。戦争中、戦地に赴いた夫を我が子と共に待ち続け、無事を祈ってお百度参りをする妻。ただそれだけの話だが、そこはさすが西川監督。そういう話にありがちな「お涙頂戴」的なニュアンスは強調せず、「人間って案外そんなものでもないよ」と言わんばかりの冷淡さを少しばかりちりばめていて、味わいある一編であった。

 そして第十夜。根拠がない憶測であるが、これは絶対原作を原型をとどめていないくらい無視していると思う。残ったのは「豚」ぐらいじゃないか。一体どんな話なのかは不親切にも割愛させてもらうが、とにかく「ブッ飛んでる」とだけは言っておこう。それもそのはず監督は山口雄大、脚色は漫☆画太郎。『地獄甲子園』のタッグである。夏目漱石と漫☆画太郎。決して並ぶことがないであろうというありえないコラボ。それにあのエキセントリックな作風で知られる画太郎が漱石の世界を踏襲できるわけがない。おかげで内容は「ヒドい」の一言に尽きるが、話はまとまっているので第八夜まで混乱させておいて第九夜でやっと受け入れられた後だったから、素直に観られたのが不思議だった。

 とか何とか書いてたら『ユメ十夜』、もうDVD出てやんの。わざわざ足運ぶまでもなかったな。もう公開するの遅すぎるよ桜坂劇場。


【No.057】ユメ十夜
ボン評価は…
☆ おもしろい ○まあまあ △つまらない ×クズ
の4段階評価です。



Posted by イリー・K at 12:00│Comments(4)【ゆ】
この記事へのコメント

「未読コレクション」大笑い〜ぱふぱふ〜
。。。どこかで使わせてもらお。。。

私も1行読むのに時間がかかります。
私の場合、、、雑念や妄想がジャマするんですよね。
Posted by デミ〜 at 2007年08月18日 13:52

昨夜は♪

ありがとうございました(^^)

るーとです。

次回、映画談義しましょう!

では。
Posted by 店長あき at 2007年08月18日 16:50

何で人気ある原作を映画化する監督は皆、原作と違う話にしたがるのでしょうか?
「俺が創った」とか言いたいんでしょうかね?
ま、大体コケるけど。
「NANA」みたいに忠実に創ればいいのに。
皆さんどう思います?
Posted by 裏Picnic at 2007年08月18日 18:09

デミ〜様

そうなんです。邪魔するんです。雑念が。特に最近は・・・。



店長あき様

おいでいただきありがとうございます。
こちらでいろいろネタを仕込んでおこうと思います。


裏Picnic様

へぇー、『NANA』ってそんなに忠実なんですか。
ま、確かめる気は毛頭ありませんが。
Posted by Dreach at 2007年08月18日 21:50
 
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