2007年10月20日
【No.062】サイドカーに犬

●9月8日鑑賞
’07/日本/カラー/94分
監督:根岸吉太郎
出演:竹内結子、古田新太、鈴木砂羽、ミムラ
美人女優とされてる人にはそのキャリアを重ねるごとに演技の幅を広げたいと様々な役柄に挑んでステップアップを計ろうとする人がいたりする。「女優」を生業としている以上、「どんな役もこなせる」ことを至上目的として日々邁進し、やり遂げようとするのは当然だし、真っ当な生き方なのかもしれない。
しかし、時折それが見ているこちらが少々眉間にシワを寄せ、どうしようという思いに駆られてしまう場合がある。『サイドカーに犬』での竹内結子はまさにこれにあたる。
弟から結婚披露宴の招待状を受け取った薫は、同時に離婚した両親も出席することを知らされ、20年前に会社を辞めた父と喧嘩になり母が家を出て行った日のことを思い出す。母と入れ替わるように父の招きで自転車に乗った変わった女性、ヨーコさんが現れる。それが竹内結子。この映画は竹内演じるヨーコさんと幼少時代の薫との夏休みのひとときを描いたハートウォーミング(こう書くとちょっと恥ずかしい)なドラマである。
ヨーコさんをさっき「変わった女性」などと言ったのは、薫の視点としての表現である。真面目な母から厳しく規律正しい生き方を強いる環境のなかで育ってきた薫の目に映るヨーコさんは何もかも変わっていた。タバコを吸い、コーラを飲めばゲップ。腕っ節が強く、性格は大ざっぱで豪快。しかし、内面は繊細な部分を持ち合わせている。悲しいかなそんなヨーコさんに竹内はピッタリ合致していなかった。
わたしは竹内結子を見ると、「無味乾燥」という言葉を思い浮かべてしまう。容姿は確かにきれいなんだけど、ただそれだけ。やる役すべて「清楚」で「お淑やか」なイメージが一貫しているという印象(というより、あんまり興味ないんでよく見てないせいなのかも)。それがいきなりああいう役をやるにはあまりに線が細い。最後に母役の鈴木砂羽と取っ組み合いするとこなんか、肉付きの違いからどうみても母圧勝だろうとしか見えない。そうして見ていくうち、だんだんと痛々しくなってくる。それはやはり元ダンナがちらついているせいかもしれない。もしかしたら、その鬱憤晴らしでこの役をやったんじゃないかとも思えてくる。まぁ、それはないだろうけども。スキャンダルはその後の仕事に何かしらの痛手になる。
妙な役者意識に目覚めてしまった竹内に比べ、久々のババア役に嬉々として扮していた樹木希林の名演を見よ。ほんのわずかな出番ではあったが、映画に小気味よいスパイスを加えてくれたのではないか。
旅先で宿が見つからず困っていたヨーコさんと薫を泊めてやろうとアイスクリーム売りの温水洋一が連れていった家に住んでいる希林ババア。肌を黒く焼き、移動するたびにありえない角度で腰を曲げ、ちょこまかと歩いていた。このあいだまで『東京タワー』でおっとりした感じのお母さんだったのに。この人は美人役以外はほんと演技の幅が広いイメージだ。この人こそ「演技」としての女優のあり方に最も近い女優かもしれない。やっぱり力あるわぁ。

ボン評価は…
☆ おもしろい ○まあまあ △つまらない ×クズ
の4段階評価です。
Posted by イリー・K at 12:00│Comments(2)
│【さ】
この記事へのコメント
役の幅を広げる前に、演技力をつけるべきですよね。
「イノセントワールド」のころが一番良かった。
何故なら「まだ若いから」でちから不足をフォローできたから……。
Posted by Picnic at 2007年10月21日 17:19
ああ〜、そんな映画ありましたね。(観てないけど)
出てたことも忘れてました。
ま、それだけ私にとっては昔から印象薄かったっつーことで。
Posted by Dreach at 2007年10月22日 09:55