2007年12月29日
【No.072】童貞。をプロデュース

●12月13日鑑賞
’06〜’07/日本/カラー/85分
監督:松江哲明
出演:加賀賢三(童貞1号)、梅澤嘉朗(童貞2号)
「愛と勇気の『童貞脱出』プロジェクト、ここに始動!」とチラシ裏にうたれたキャッチコピー。
「そんな大げさに・・・」と一瞬呆れてしまいそうだが、本人たちにしてみれば、男子たるもの、?筆を下ろす?というのは人生において一大事なのである。
本作はタイトル通り、登場する社会に適応できそうにない2人の青年を「童貞脱出」の名目のもと、?一皮むけた?人間にするドキュメンタリーである。
今回、監督へのインタビューをするにあたり、なんと公開前だというのに、本編が収められているDVDをお借りすることができた。宣伝媒体となるプレス(雑誌)関係者に配布されるいわゆる「サンプル」というやつである。
一般の方々より一足先に映画を観られるという優越感。映画コラムを書く以上、私にとっては是非一度味わってみたい夢であった。もうすぐ創刊2周年を迎える本誌はいち求人誌ではあるが、他の名だたる一般誌と肩を並べる情報誌と認められるようになったということか。ただ、本作に限って、映画会社のガードが?緩すぎる?だけかもしれないが。
インタビュー前日。最新号のデータを搬入し、すべての誌面製作が片付き、帰宅してようやく観ることができた。これから公開される映画を自宅で観られる喜び。「サンプル」「要返却」と書かれたDVDに思わず胸が躍る。疲れがたまって途中で寝てしまうかと少々心配はしたが、再生ボタンを押したあと、手を叩いて笑ったり、喰い入るように顔を画面に近づけたりと、85分という上映時間が感じられない息をつかせぬものだった。
一般映画にはあまりお目にかかれないタイトルにある「童貞」から醸し出されるエッチで猥雑なイメージから女性からは敬遠されそうだが、そんなことはない(ちょっとはあるけど)。
本作は主役2人の?心の冒険活劇?というと言い過ぎだが、「いまだに童貞」の発生源となって立ちはだかる障壁を乗り越える過程と何としてでも成し遂げたい彼らの?闇雲さ?が映し出されていて清々しささえ感じてしまう。そして笑わずにはいられなかったのも事実である。「社会に適応できそうにない」だけあってどこか「偏っている」この2人。自己紹介を自分で撮るようビデオカメラを渡されるが、彼らは何の臆面もなく自分の「小世界」を披露している。すぐに想像がつくであろうが、隙間なく埋め尽くされたアイドルの切り抜き写真のスクラップブックを見せたり、電話相談で出演したラジオ番組のテープを聞かせたりといった具合。そんな「小世界」から一歩外へ踏み出し、孤軍奮闘するのだが、カメラの前にいる彼らはいつもどこかいたいけで、真剣なまなざしが胸を打つ。けど笑える。この笑いは蔑んだ差別的な笑いではなく(「小世界」の段階ではそうだったが)、自分自身と重ね合わせて共感してしまう笑いである。「そんなことはない」と高をくくる方でも何かひとつは身につまされる部分があるはずである。
最後に本作の評価にいきたいところだが、今回はどうも判断がつきかねる。ドキュメンタリー映画という括りになっているが、全然ドキュメンタリーという感じがしない。なんかノリがバラエティっぽいのである。それもゴールデンタイムで流れる日の目を浴びたものではなく、ド深夜にテレビをつけるとたまたまやっているような影に隠れたやつ。これはいちいち笑いを誘う一因でもあると思うのだが。まぁ、この件に関しては次のページで監督にお話を伺うとして、「中身は面白いが、ドキュメンタリー映画としてどうか」という点から、最高か最低の2つに分かれるが、ここは年末だし、特別編ということで大目に見て右の評価とさせていただきました。「大目に」ってこれから会う監督に向かって何様なんだ私は。

ボン評価は…
☆ おもしろい ○まあまあ △つまらない ×クズ
の4段階評価です。
Posted by イリー・K at 12:00│Comments(0)
│【と】