2008年03月01日
【No.076】歓喜の歌

’07/日本/カラー/112分
監督:松岡錠司
出演:小林薫、伊藤淳史、由紀さおり、安田成美
私は落語に関してはよく知らないが、テレビに出ている落語家ならいくらでも知っている。笑福亭鶴瓶、春風亭小朝、桂三枝、林家正蔵(旧名・こぶ平)、そして忘れちゃいけない「笑点」メンバーなどなど。主にバラエティーやトーク番組などで活躍しているこの方々とは一線を画して、立川志の輔という人は別の位置付けにあるように思われる。
長寿番組「ためしてガッテン」の司会を務めていることから“くらしの情報を発信している人”とか“主婦の心強い味方”といったイメージがあるせいだろう。それよりも私にとっては昔をさかのぼり、「クイズ世界はSHOWbyショーバイ!!」のナレーション、さらにさかのぼれば「運命GAME」のサブ司会としておなじみだった。誰も知らないだろうこの番組。17年前、毎週面白く見ていたが、視聴率不振の憂き目に遭い、半年であえなく終了。パートナーだった中井美穂と共に発した「ミステイクを探せ!」というコールが懐かしい。以上が私のメモリーオブ志の輔。
その立川志の輔の創作落語を原作にした映画が『歓喜の歌』である。持ち前の適当さで日頃の業務をこなしている文化会館の主任が、似かよった名前の2つの女性コーラスグループを取り違い、大晦日のコンサート会場をダブルブッキングしてしまう。それに気づいた時にはその日を迎える前日だった。日程の変更を両グループにかけ合ってみるが、両者とも一歩も譲らず、ただただ頭を抱えるばかり。そんな当日本番までの奮闘ぶりがこの映画では描かれている。
「ハートフルな音楽コメディ」という触れ込みの本作だが、中身は何てことはない人情喜劇だった。典型的な人情ドラマをただなぞっているだけ。あれだけダメダメだった主任があれこれ飛び回っているうち、たった二日足らずでみるみる成長していく。最初ツンツンしていた両グループもそんな主任にいつしか穏やかになっていく。
それに加えて終盤では「それはないだろ」と難癖をつけたくなるご都合主義。正味一日しかない時間であれだけうまくいくとは思えないもの。それがいかほどのものかは劇場でお確かめ下さい。
と、ここまでケチョンケチョンに書いてきたが、マイナスになりがちなところを小林薫、安田成美、由紀さおりなどベテラン勢のソツない演技と、『東京タワー』(映画版)の松岡錠司監督のこれまたソツない演出で見事にカバーされている。平均以上の快感、爽快さはないが、普通に観られる「安定感」が映画全体に漂っている。
最後に余談だが、コーラスグループのリーダーを演じていた由紀さおり。もしやと思ったらやっぱり歌っていた「トルコ行進曲」。朗々と歌うコーラスグループの面々を映していくところで無意識に姉(安田祥子)の姿がいないか確認したら、ちゃんといてやんの。妹の隣ではなかったが、隊列に混じって本業のコンサートと同じように歌っていた(コンサート見たことないけど)。しかしテレビで(特にNHKで)見ていた安田・由紀姉妹の熱唱が、まさか銀幕でお目にかかれるとは。もしかしたら本作が用意した会心のサービスショットかもしれない。誰に向けてのサービスなのかはわからないが。

ボン評価は…
☆ おもしろい ○まあまあ △つまらない ×クズ
の4段階評価です。
Posted by イリー・K at 12:00│Comments(0)
│【か】