【No.045】青春☆金属バット

イリー・K

2007年03月10日 12:00



●1月14日鑑賞
’06/日本/カラー/96分/PG-12
監督:熊切和喜 音楽:赤犬
出演:竹原ピストル、安藤政信、坂井真紀、若松孝二



 気がつけば、先週で1周年を迎えていた当コラムだが、私の意に反して徐々に各方面に浸透しているようである。で、今まで伏せていた事だが、私にとってこのコラムを最も読まれたくない人たちがいる。それは他でもない桜坂劇場のスタッフ及び関係者である。その理由はたったひとつ「怖いから」。あれだけ好き勝手に書いてたら何言われるかわからないもので。

そんで先日、劇場の受付に着くなりスタッフから開口一番「今日は何観ましょうか?」と言われた。そのときは一瞬肝を冷やしたもんだがその翌週、とうとう耳にしたくない一言が私に発せられた。「いつも読んでますよ。」。顔割れてんじゃん。ま、あんな風体で毎週通ってたら当然か。その時は伏し目がちになり「ありがとうございます。」としか言えず、そのあと何と続くのか聞くのが恐ろしかったので、半券を受け取るなり足早に館内へ入ったのだった。いやぁ、こわいこわい。

 そんな冷や汗タラタラの状態で観たのは『青春☆金属バット』。「青春」と「金属バット」を結ぶ「☆」は一体何を意味するのか。おそらくつのだ☆ひろとは関係ないだろう。タイトルの分析はいいとして本作は「フルスイング・パンク・ムービー」と銘打たれた一風変わった青春映画だ。高校時代、共に野球に打ち込み挫折を味わった難馬と石岡。10年後、難馬はバイト先のコンビニとアパートの往復、その合間にプロテストに向けてただ素振りを繰り返す毎日を送り、石岡はやる気がまったく無い不良警官となっていた。そこにベーブルースの息子と自称するジジイや強盗を企む車の塗装屋など、クセのあるキャラクターが絡みこの「一風変わった青春映画」は展開する。実に乱暴なあらすじ説明になったが、とにかく劇中は救いようがない人間しか出てこない。そんなろくな大人になりきれない者にもちょっとした転機や希望は訪れる。そんなことを言いたいんだろうなぁと思わせるような映画だ。

 それよりも今日問題にしたいのはヒロインを演じた坂井真紀である。「問題」というのは演技がどうこうとか映画の中で浮いているとかということではない。劇中で坂井は巨乳の飲んだくれ女、エイコを演じている。常に一升瓶を持ち、巷のコギャルを襲って金を巻き上げたり、路上駐車を見つけたら車の屋根によじ登ってボコボコにしてゲロを吐く全くもって始末の悪い女だ。チラシ裏にある彼女の紹介欄を見ると「初の巨乳役」とあった。そんな役あるのか。役柄上「汚れ役」とかなら分かるが「巨乳役」。ま、男で「巨根役」と紹介されるよりまだマシだが、劇中での坂井の乳房はメーキャップ、つまりニセモノだ。だからといってわざわざ「巨乳役」と紹介する必要性はないのに。そこにはやはり映画の宣伝要因のひとつとしか考えられない。そう書かれているチラシが立派な宣伝媒体だから当たり前なのだがちょっと?あざとさ?を感じてしまう。

 いろいろ推測するに、実際に豊満な女優が演じると本物だから持つ「色気」が先立ってただ生々しいから作品の雰囲気に不向きだとか、ニセ巨乳で演じる面白さとかがある上での坂井の起用であろう。

 そういえば昨年の夏ごろ「坂井真紀、巨乳役で大はしゃぎ!」というようなかんじのしょーもないネット版の芸能ニュースを見たのを思い出した。これは「坂井真紀は貧乳である」という一般の共通認識がなければ成立しないニュースである。何とも失礼な共通認識だが肝心の映画についてはほとんど触れていなかった。チラシの「巨乳役」が宣伝要因だったなら、これは明らかな失敗といえないか。まぁ、どっちにしろ「巨乳役」が映画の大きな訴求力にはなり得ないんだけどね。

 そんなわけで最後は下世話かつお下劣な内容になったことを深くお詫びする次第である。



ボン評価は…
☆ おもしろい ○まあまあ △つまらない ×クズ
の4段階評価です。

関連記事