【No.084】やわらかい手
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’06/イギリス=フランス=ベルギー=ドイツ/カラー/103分
監督:サム・ガルバルスキ
出演:マリアンヌ・フェイスフル 、 ミキ・マノイロヴィッチ 、 ケヴィン・ビショップ 、 シボーン・ヒューレット 、 ドルカ・グリルシュ
今日はいつもの公開中の新作ではなく、CSで見た映画をご紹介したい。
人はどんなに明日が見えない困窮した状況に身をおいても、愛するものを守るためならいかなる仕事もいとわないものだ。たとえそれがフーゾク(性風俗のこと。言わなくてもわかるか)であっても。
自分で言ってて大丈夫かと気にかけてしまうが、今日の映画『やわらかい手』の主人公はそんな切羽詰まった状況でもとにかくがんばる、そんなお話しである。しかしその主人公はなんとおばあさん。稼げる当てが全くないおばあさんが、難病に冒されている孫を救うために偶然見つけたフーゾクの仕事で人肌脱ぐのである。
”人肌脱ぐ”と書いたが、これは慣用的な意味で実際には脱がない。
「しかしババァのフーゾクってぇのはなぁ・・・」と顔をしかめたそこのアナタ、ここで読むのを止めないでほしい。お願い、とにかく止めないで。知りたくはないとは思うがどんな仕事かというと、壁にひとつ穴が空いていて、そこに客である男性がナニを入れて壁の向こう側で握って”ご奉仕”するというもの。劇中でも言っているが、これは日本の歌舞伎町で開発されたものらしい。いろいろ考えるなぁ日本人は。車やカラオケなど世界に誇る文化はたくさんあるが、隠れたところでフーゾクなどの商売も立派な文化として確立しているのだろう。「オナホール」ひとつとっても目を見張る進化を遂げているし。
ついつい日本人のドスケベ文化に関心しきりになってしまったが、そんな性風俗の仕事に従事することになったおばあさんは苦渋の決断で入ったとはいえ、やはり最初はイヤイヤながらぎこちない仕事ぶりをするのだが、人間数を重ねれば慣れるというもの。みるみる上達し片手間に雑誌を広げるまでに成長する。やがて客の間で評判となりギャラもうなぎのぼり。なんとか目標額を工面することができるようになるが、いつまでもうまくいかないのが人生。その先におばあさんを待ち受ける苦難とは。
なんか「身体的リスクを負わないフーゾクとそれを仕事にしてしまったおばあさん」をクローズアップしたような紹介の仕方になっているが、これはフーゾクの映画ではなく、おばあさんが手にした仕事がフーゾクというだけで、労働者階級で生きにくい社会であがいているおばあさんの涙ぐましい生き様が描かれている映画である。だから猥雑さなんて軽い程度だし、ホントこのおばあさんには心打たれる。
これだけ心打たれる要因のひとつにはタイトルの効果があると思う。『やわらかい手』というのは日本のみのタイトルで原題は『IRINA PALM』。フーゾクでのおばあさんの芸名である。これでは初見でなんのことかわからない。で、日本の配給会社はあの仕事内容からあんなどうとでもとれるようなタイトルを編み出すとは。そのセンスたるや、タイトルの妙を感じずにはいられなかった。
ボン評価は…
☆ おもしろい ○まあまあ △つまらない ×クズ
の4段階評価です。
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